やまねこの物語

日記 CHIHIRO

2003年6月19日になってようやく映画「千と千尋の神隠し」がドイツで一般上映された。やはり幾つかの国際的な賞を受賞したためか、この映画に関する報道はテレビや新聞などでも多く見られた。テレビコマーシャルで何度も繰り返され、また街頭の広告塔にもポスターが張り出され、宮崎駿監督作品「もののけ姫」以上話題になっていたように感じる。

僕はこの映画を今まで一度も観たことがなかったので、映画館に足を運んだが、お昼の時間帯だったせいか、約100人弱座席のある小さな上映室は、子供で一杯で大人の姿は子供を連れた引率の大人を除くと、数人しかいないように感じられた。上映室はまるで小学生の課外授業か貸し切りといった感じで、上映前は子供が席を移動したり叫んだりと非常に賑やかであった。

映画が始まったが、最初は静かに観ていた子供達も最後までそれを続けるのは難しく、途中何度か緊張の糸が切れた。シーンによってはスクリーンに夢中になるが、時には席を立ってトイレに行く子供も多かった。僕は最後部座席だったので、前に座っている子供の様子がよく分かったが、僕自身は映画を観ているというよりは、日本の映画に対して子供がどのように反応するか、子供を観察していたのかも知れない。子供にとっては何処の国の映画であるかは重要でないかも知れないが、自分にとっては日本の映画という意識がある(逆に言うと日本の映画でなかったら僕は観に行っていないかも知れない)。

映画が終わってエンディングの曲が始まったとき、自分を除く全ての観客が上映室を出て行って、まだ歌の最中にもかかわらず、清掃の人が掃除をし始めた(しかし僕がまだ映画を観ていると分かると彼は掃除をやめ、上映室から出て行ったが)。子供は余韻に浸ることなく真っ先に出ていったことを考えると、この映画は小学生のような子供にとっては(アニメであっても)難しすぎたのかも知れない(時間的に長かったとは思う)。僕は日本での観客層を知らないが、この映画、ドイツではアニメということで子供向きと位置づけされていたように思う。観客層が予め限定されると、この映画が云わんとしていることが上手く伝わらないということもあり得る。

最近は多くのチャンネルで色々なアニメ(特に日本のアニメ)が放送されているが、まだまだドイツではアニメが大衆的な地位を得ていないようにも感じる。ドイツにもドイツオリジナルのアニメがあると思われるが、その数も少なく、ほとんどがアメリカや日本からの輸入である。そういう意味ではドイツにはアニメの土壌が無いとも言える。が、今から10年後には、今現在日本のアニメを見て育った子供が大人になって、ドイツのアニメ界にも変化があるかも知れない。映画「CHIHIRO」、獲得した賞云々ではなく、10年後、どのように評価されるか楽しみである。

広告塔

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ポスター

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(2003年06月28日)

 

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