きっかけは友人との会話だった。友人の親類が日本から来られたが、日本からホテルを予約される時、どのホテルも既に一杯で空きを見つけるのに非常に苦労されたという。また平日にもかかわらずドイツ料理のお店が予約で一杯になっていたとのこと。そしてそれらの原因の一つが
BAUMA 2004 と呼ばれるメッセ(見本市)ということだった。友人も僕もドイツで大きなメッセを体験したことがなく、それほど影響を与えるメッセを見に行こうということになった。
メッセと言えば個人的には国際ワインメッセが思い浮かぶが、これはミュンヘン市内の
M,O,C, というメッセ会場で行われているものでワインメッセとしての規模は大きいものの、会場の規模としてはそれほど大きくない。今回の BAUMA はミュンヘンのメッセ都市(Messestadt)と呼ばれる大きなメッセ会場で行われる。後者の方を僕は一度も訪れたことがなく、今回初めて訪れた。ここは1992年までミュンヘン空港として利用されていた場所で、1998年春に新メッセ都市としてオープンした(メッセはそれまで市内のテレージエンヘーエにあった)。新しいメッセ会場は非常に広いが、もともと空港故に市内から少し離れている場所にある。
今回訪れた BAUMA 2004 というメッセは建設機械、建設資材に関する国際見本市でその分野では世界最大規模とのこと。今年は約500.000m2の広さを使い、2801の企業・団体が参加(そのうち52パーセントがドイツ国外からの参加)、2004年3月29日(月)から4月4日(日)までの期間に40万人の入場者が見込まれている。また今年はその50周年と言うことで記念すべき年となっている。BAUMA の第一回目はテレージエンヘーエにあったかつてのメッセ会場で1954年、58の企業等が参加して開催され(総展示面積は12.000m2)、8000人の入場者があったとのこと。数字を見ると、この50年で非常に大きなイヴェントとなったのが分かる。
当日、僕たちは地下鉄に乗ってメッセ会場へと向かったが、お昼過ぎとしては珍しく地下鉄の車内は多くの人で一杯だった。そのほとんどの人が会場の駅で降りたことから、このメッセが如何に大きな催しであるか簡単に想像が付いた。訪れる人の中には時折、女性や子供の姿も見つけたが、そのほとんどが、所謂、おじさんといった世代であった。実際に現場で働いている人やその分野に従事している人が多いようだ。
友人と僕は午後1時に入場ゲートを通過した(入場料は一般が20ユーロ、学生12ユーロ)。会場内にはカッターナイフのような小さなものから、クレーンや重機なような大きなものまで建設をテーマに様々な展示がなされている。メッセを訪れた感想を結論から述べると、展示の数、その規模に非常に圧倒されたと言うことに尽きる。建設機械、普段の僕の生活にとっては全く馴染みがない。また出展している企業名も、日本の会社なら知ったものがあるが、そのほとんどが僕には無名なものばかりであった。
メッセ会場はとにかく広い。広いとは知っていたが、実際訪れてみると想像以上の広さであった。午後1時に入場して午後7時過ぎまで会場にいたが、それでも全てを回りきることが出来なかった。一度だけベンチに座って休んだことがあったが、それ以外はずっと歩いていた。万歩計を付けていなかったのが非常に残念である。ところで入場券の種類には僕が購入した一日券以外に3日券というのもある。これだけ広いと、特にその分野に興味、関係がある人にとっては、全てを回るのに3日はかかってしまうだろう。
展示会場は屋内だけでなく屋外にもある。こちらは例えば重機の実演がなされており、そのために観客席のようなものも設けられてあった。ところで個人的に一番圧巻だったのは、屋外の展示場に出た時だった。幾つものクレーンが所狭しと立ち並んでいる。その光景を見た時、何故か、思わず笑ってしまった。何かが可笑しかったわけではない。それらの姿に圧倒されたのだろう。具体的にどれほどの数のクレーンがあるのか僕には分からない。おそらく数としてはそれほど多くはないと思われる。しかし青空を背景に建つクレーンはそれぞれがまるで意志を持っているように見え、色々な方向を向いて立っている姿に本当に圧倒された。
この圧倒されたクレーンの光景を目の当たりにした時、友人と一緒で本当に良かった。人は何かに心動かされた時、それを誰かに伝えたいと思う。が、実際、その感動を伝えるのは非常に難しい。その意味においても、その時間、その場所を友人と共有出来たのは本当に良かった。いずれにしてもクレーンを見て心動かされるのも可笑しいと思うが、言い換えれば、建設機械はそれだけ自分の身近にあるわけではなく、機械と言うより一つの作品と映ったのかも知れない。
先にも書いたが、メッセ会場は本当に広い。まるで一つの街と言っても過言ではない。その会場で行われた今回のメッセはその規模から、その準備にも非常に多くの人が携わっていると思われる。こういった大きなメッセがどれほどミュンヘンで行われているか分からないが、自分が住んでいる街でありながら、今まで自分の生活とは全く接点がなかった。ミュンヘンという街はそれだけ大きいと改めて感じられた。この日はミュンヘンという街の、別の一面を知った日でもあった。
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