やまねこの物語

日記 FILMFEST

2004年6月26日(土)から7月3日(土)の8日間、ドイツ最大の映画祭の一つ「22. FILMFEST MUENCHEN 2004(第22回ミュンヘン映画祭)」が開催された。今年は35の国と地域から合計197作品が選ばれ、市内のガスタイク(市民文化センター)、フィルム博物館、3つの映画館でそれらが上映された。オープンエアーのものなど幾つかのものを除き、基本的にはドイツ初上映の作品が上映される。それぞれの映画のチケットも2オイロ(約260円)から8オイロ(約1000円)までと非常に手頃なものとなっており、また上映開始時間も午前9時から、午後11時(終了は午前1時前)とほぼ一日中映画が上映されている。

僕はそれほど映画を観るわけでもなく、また映画の分野は分からないので、今回上映されたものがどういったものなのかは分からないが、友人がもらってきてくれたプログラムを見て興味を惹かれたものを幾つか観てみようと思った。一番観たかった作品は、その内容ではなくタイトルから選んだ「Die Wittelsbacher / 監督 Stephan Hartwig u Bohdan Graczyk」というもので、」直訳すれば「ヴィッテルスバッハ(家)の人々」といったところだろうか。ヴィッテルスバッハ家はバイエルンの王家で1180-1918年の間バイエルンを統治してた名家である。

しかし映画はその名家を扱ったものではなく、ミュンヘン市内を流れるイザール川にかかるヴィッテルスバッハ橋の下で生活するホームレスの話だった。プログラムにも「名家の話ではない」と説明されてあるので、間違えて来る人はいないと思われる。その作品を観るために僕は映画館へ行ったが、これはそのタイトルからか立ち見がでるほどの人気だった。これが「ヴィッテルスバッハ」ではなく、プロイセンの名家である「ホーエンツォレルン」だったら、ここまで人は入っていないかも知れない、と一緒に観に行った友人とも話していたが、映画館の中を見回すと、一目でそれと分かる日本人(アジア人)は僕たち以外には見あたらなかった。

映画ではミュンヘンの風景がさりげなく映し出され、観ていて親近感を覚えた。話は少しずれるが街の風景といえば、今回観た作品の一つで「Emil und die Detektive(エミールと探偵)/ 監督 Gerhard Lamprecht」は1931年の作品で、白黒ながら当時のヴァイマール共和国の首都ベルリンの街が映し出されていて 非常に興味深かった。この作品は公開されてから70年以上も経っているにもかかわらず、まだその輝きを失っていないように感じられ、現在でも楽しむことが出来た。

映画「ヴィッテルスバッハ」の方は、現代のドイツが抱える東ヨーロッパに関することが扱われていたが、映画が終わった後の拍手の数は、僕が観た作品の中でこれが一番多かった。エンディングロール終了後にも再度、大きな拍手があったのもこの作品だけであった。

僕はこの映画祭で4日間合計9作品を観ることが出来たが、面白く印象に残る作品の他に、自分の物差しでは測れない作品もあった。映画祭では色々な作品を一度に観ることが出来、自分が普段観ることもないジャンルの作品も手頃(手軽)に観ることが出来る。それは映画祭の良い点の一つだろう。

またそれらの作品以外に日本の作品「Nobody Knows / Daremo Shiranai / 監督 Kore-Eda Hirokazu」も観ることが出来たのは良かった。これはカンヌ国際映画祭で主演男優賞を受賞した話題作であるためか、映画館には多くの日本人がいた。といっても僕はエンディングロールでその名前を見るまで、これがその話題作だとは気付かなかったのだが。日本の映画といえば「Yoshinos Frisoersalon / Barber Yoshino / 監督 Naoko Ogigami」は肩肘張らずに楽しむことが出来た。ただこの作品は日本語上映、ドイツ語ナレーション、英語字幕というものだったので、観る時に時々混乱した。

今回僕が観た作品の中で一番良かったのは最終日7月3日(土)の最終時間(午後10時半から)上映された一つのフランス映画(ドイツ語字幕)だった。タイトルは分からない。「分からない」というのはプログラムには、単にUeberraschungs-film としか載っていないからである。つまりタイトルやその内容を上映まで一切教えないと言うもので、何が上映されるか全く分からない、映画は観てのお楽しみ、というわけである。この時間帯には他の映画も上映されているので、このタイトル非告知の映画を観るのは、賭けのようなものがあったが、僕と友人はそれを観ることにした。綺麗な映画を観て映画祭を終えたいという、僕と友人の期待・希望がそこにはあった。

400人収容の映画館に、この「観てのお楽しみ」映画を観に来ていたのは100人以上はいたと思うが、映画館が広いので、空席が目立ち、それがかえって映画を落ち着いて観させる空間にもなっていた。上映された映画はアクションでも、ミステリーでも恋愛ものでもなく、新任の音楽教師と生徒の話で、涙無くして観られないといった感動的な内容でもなかったが、これはもう一度観てみたいと思わせる作品であった。個人的にはこの映画で映画祭を終えることが出来て良かった。僕としては短期間にこれだけの映画を観たのは初めてのことであったが、いずれにしても色々な映画を観ることが出来たのは良かった。

ところで今回の映画祭で会場になった映画館(フィルム博物館を除いて)はイザールマイルと呼ばれるルートヴィヒ橋を中心にした一つの通り上にある。この映画祭が行われたガスタイクや映画館は夜、緑の光線で結ばれていた。映画館入り口上を見上げると緑の光線があって、それを追っていくと次の映画館へと繋がっている(全部の映画館が繋がっているのか確認は出来なかったが少なくとも3箇所は繋がっていた)。今回の映画祭では35の国と地域からの作品が上映されたが、その中にはヨーロッパやアメリカだけでなく、アジアや中東の作品もあった。そういった意味では色々な作品が、このミュンヘンという地で結ばれているという気もする。映画にはそれぞれの国などの文化が表現されていると思われるが、こういった映画祭が他の文化を知るきっかけにもなれば、また色々な意味で人が結ばれるきっかけになれば、と思う。
 

追記

最後に観たフランス映画は「Les choristes / 監督 Christophe Barratier」という作品。
 

ミュンヘンフィルムフェストにようこそ

ミュンヘンフィルムフェストにようこそ

映画館とフィルムフェストのポスター

映画館とフィルムフェストのポスター

ガスタイクとフィルムフェストの看板

ガスタイクとフィルムフェストの看板
向こうに見えるのはオープンエアーのスクリーン

映画館とフィルムフェストの看板

映画館とフィルムフェストの看板
 

ガスタイク内

ガスタイク内

ガスタイク内

ガスタイク内

ガスタイク内

ガスタイク内

映画のポスター

映画のポスター

(2004年07月04日)

 

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