| 2004年6月26日(土)から7月31日(土)までミュンヘン・オペラフェストが催されている。その中で"Oper 
                fuer alle"(全ての人にオペラを)と題された入場無料のコンサート(7月10日)、オペラ中継(11日)が催された。1997年にバイエルン州立劇場前のマックス・ヨーゼフ広場で始められたこの催しは、マックス・ヨーゼフ広場と今回初めて劇場裏側のマールシュタル広場で催された。 7月10日(土)は州立歌劇場オーケストラによる演奏、ズービン・メータ指揮でマーラーの3番が演奏され、11日(日)には同じくメータ指揮でリヒャルト・ヴァーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」が劇場から広場にライブ中継された。10日のコンサートに関して僕は始まる前に広場を横切っただけなので、どのようになされたのか分からないが、11日のオペラ中継の方はほぼ最初から最後まで観ることが出来た(ページ下の写真は基本的に撮影した時間順)。 11日の「マイスタージンガー」は午後5時に始まった。僕は第一幕の途中でマックス・ヨーゼフ広場に向かったが、天候が優れないにもかかわらず、そこには既に多くの人がいた。スピーカーから出てくる音はレジデンツや劇場、郵便局などの建物で囲まれたマックス・ヨーゼフ広場では非常に響き渡り、劇場からのライブ中継を見ていると言うよりは何か映画を観ているような感があった。舞台そのものが映し出されるのではなく、歌手が映し出されることが多かったせいかもしれない。ただ第三幕の合唱の部分では、残響音が残る広場独特の響きがあってか、劇場内で観るよりも迫力があるように感じられた。 約40分間の休憩を2度挟み、オペラは午後11時過ぎまで続いた。その間、何度か雨が降って空気が徐々に冷やされていき、また冷たい風も吹いていたので実際の気温(10度)以上に寒く感じられるようになった。広場ではビールなども販売されていたが、寒さ故か、第三幕の頃には飲んでいる人の姿を見つけるのも難しくなっていた。僕はフェンスにもたれながら観ていたのだが、気付けば回りにいた聴衆の数はかなり減っていた。僕はそれだけ中継に集中していたのかも知れない。 僕が立っていた郵便局側では人が少なくなっていたが、広場中央では、その寒い中、最後まで多くの人が残っていた。オペラが終わった時、まるで劇場にいるかのように拍手をしている人やブラヴォーを叫んでいる人がいた。そういえば劇場内で聴いていた友人に伺うと、オペラの最後の音が鳴る前に緞帳が閉まり始め、同時に拍手も沸き起こったらしいが、広場では最後の音に合わせて拍手が一斉に始まった。 オペラ上演後は州立劇場の正面階段に出演者が出てきて挨拶を行った。友人曰く、その挨拶のためにカーテンコールは非常に短かったらしい。外では最初のカーテンコールの映像しか流れず、その後はライブ中継に関わった人達の名前が映画のエンディングロールのように流れていた。暫くすると出演者が出てきて挨拶を行ったが、これも今回の“全ての人にオペラを”ならではの演出だろう。 ところで話は少しずれるが、1882年、第一回国際電気博覧会がミュンヘンのガラス宮殿(現在の旧植物園公園にあった建物。1931年焼失)で開催された際、ここで世界初めての実用電線が引かれた。そして当時の王立劇場(現在の州立劇場)からオペラのライブ放送がガラス宮殿内に流された。劇場内で聴いていない人の熱狂は、今回僕が最後まで聴いた"Oper 
                fuer alle"に似ているかも知れない。そんなことを考えながら「マイスタージンガー」を聴いていた。 |