先日、とある医者の開業30周年記念パーティーがあった。その中で、僕がいつもお世話になっているご夫妻(歌手とピアニスト)が演奏されるというので、僕はその録画・録音係としてパーティー会場に足を踏む入れることが出来た。聞けば、ご夫妻とその医者の方は長い付き合いらしく、これまでもこの方の色々な催しで演奏されているとのこと。
パーティーはニンフェンブルク城のフベルトゥスザールというホールで行われる。数年前に行われた、この医者の60歳の誕生日パーティーはレジデンツ(宮殿)内の一部を借り切って行われたらしい。その際は料理も高級デリカテッセンとして有名なダルマイヤーの料理スタッフが揃えられ、招待客(約300人)にフルコースが振る舞われたとのこと。そういえばパーティーの挨拶で開業40周年の際にはノイシュヴァンシュタイン城を借り切ると言っておられたが、本当に借り切ってしまいそうな雰囲気があった。
今回の開業30周年記念パーティーは午後4時に始まるというので、僕は先述のご夫妻と一緒に午後2時半頃ホールに向かった。プローベ(リハーサル)が行われている間、僕はカメラやマイクの位置を合わせる作業をした。そうしている内にホールの下の方が騒がしくなってきた。午後4時からのパーティーに向けて招待客が集まってきたようだ。下を覗いてみると、まるでオペラフェストのように着飾っている人達の姿が見える。それだけこのパーティーが本格的なものだということが感じられた。
今回のこのパーティーのメインはコンサートである。第一部がシューマン・オーケストラによるオーケストラコンサート(3部構成、2時間)、第二部が歌曲コンサート(1時間弱)、第三部がオペラガラ(1時間20分)と非常に充実した内容となっている。それぞれのコンサートの前に挨拶(約30分)があり、またコンサートの合間にはフベルトゥスザール下のオランゲリーザールにて立食パーティー形式で食べ物や飲み物が振る舞われた(上で60歳の誕生パーティーにはダルマイヤーの料理と書いたが、今回は何処のお店のものか分からなかった)。
3つのコンサートはそれぞれの時間が示すように非常に長かった。また窓が壊れていると言うことで全ての窓を開けることが出来ず、歌手の人(メゾソプラノ)も人前に出てきて「暑い!」と第一声を出していた。窓の外には噴水があり、涼しそうな、その流れる音が風の通らないホール内に響き、かえって暑さを増していたようにも感じられる。またホール内には熱気もあった。特にコンサート第三部のオペラガラが、良く耳にするアリアが多かったせいか非常に盛り上がっていた。そういえば医者の挨拶の中で音楽は治療にも役立つと言っておられたが、コンサートにおける観客の反応を見ていると、何処か楽しそうに見え、医者が言っておられたことも間違っていないと感じさせられる。
今回も約300人ほどが招待されていたらしいが、その数がそれほど多く感じさせられないほどに食べ物や飲み物が振る舞われた。デザートも用意され、またコンサート終了後もワインを中心に飲み物が出された。僕もそういったものをいただいたのだが、個人的にそのパーティーで良かったのは、会場に来ておられたドイツ・ジーゲン大学の先生と休憩中や終了後(翌日も)、お話しする機会が持てたことである(どうもありがとうございます)。パーティーに招待されていたのは、その医者の友人・知人だけでなく患者も来ているかも知れない。このパーティーを通して、色々な交流が生まれている可能性もある。僕個人としては非常に印象に残るパーティーとなった。
ところで、このフベルトゥスザールは1755-57年選帝候マクシミリアン3世によって建設され、19世紀までヴィッテルスバッハ家のコンサートホールとして利用されるようになった。階下のオランゲリーザールはオレンジ栽培温室として利用された。当時、コンサートを聴いた人にオレンジが振る舞われたのか、僕には分からないが、オレンジを食しながらのコンサートというものがあれば、それは非常に記憶に残るものになっただろう。
|