先日、ミュンヘン近郊のウッティングという街に出かけた。以前掲示板で、この街にある「アテネ五輪の巨大迷路」に関する情報をいただいたからである(情報をいただいた海馬さん、どうもありがとうございます)。その記事は次の一文であった。「ミュンヘン近郊のウッティングでトウモロコシとヒマワリの畑にアテネ五輪のマークと円盤投げの選手をかたどった地上絵(航空写真)が(7月)21日公開、来訪者は迷路の通り抜けを楽しむことができる。」(下の写真はインフォメーションで売られているもの。期間は2004年7月21日から9月中旬まで)
というわけで、晴れた日に友人と二人でウッティングに向かった。ミュンヘンからは市内と近郊を結ぶ近郊電車(S-Bahn)とドイツ鉄道を使って行くことが出来る。または近郊電車と船でも行くことが出来る。僕たちは前者でウッティング駅に着いたが、迷路に関する案内は何処にもなく、また駅にも人がいなかったので、隣にあるお店で場所を確認した。湖岸沿いに歩いていくとキャンプ場があり、迷路はそこにあるとのこと。
その情報を元に、まず湖岸に出ることにした。Ammersee
アマー湖(日本語名は辞書を参照した)へは歩いて5分もかからずに辿り着くことが出来た。この日は雲一つない快晴で非常に暑く、湖面に反射する太陽を目にすると、更に暑く感じられた。湖岸では気持ちよさそうに体を焼いている人や泳いでいる人の姿を目にすることが出来る。
湖岸沿いの道から森の中のような道を抜け、更に歩くとキャンピングカーが幾つも並んでいるキャンプ場へと出た。しかし回りを見ても何処にもそのような迷路がある気配がない。案内板もなかったので、仕方なくもう少し歩くと、「迷路」と書かれた小さな看板が目に入り、そこに沿っていくと巨大迷路の入り口らしき場所に辿り着くことが出来た。よく見てみると幾つかの国旗が立れられてあり(その中にはバイエルンの旗もあった)、間違いなくここがその巨大迷路であることが分かった。
迷路入り口側には小屋が建てられてあり、その壁にはこの迷路が幾つかの新聞に取り上げられた際の記事が貼られてあった。残念ながら日本語のものはなかったが、色々な紙面で取り上げられているのが分かる。またここに来て初めて知ったことだが、このトウモロコシとヒマワリ畑(14.000m2)は1999年から毎年、迷路を創造しているようだった(2004年で6回目)。地元の人にとっては既に街の名物的な存在になっているのかも知れないが、もう少し案内(例えば駅に表示等)があれば、もっと多くの人が楽しめるのではと感じられた。
壁にある、この迷路に関する情報を見た後、入場券を購入した。一番最初に挙げた新聞の紹介文に「来訪者は迷路の通り抜けを楽しむことができる。」とあったので、自分の中では気楽に楽しめるものという想像があったが、入場する際分かったのはルールがあるとのことだった。入場者は、どのように迷路を楽しむか、入り口で4種類の中から選ばなければならない。選択肢はオリンピックに因んで「選手」「コーチ」「ドーピング・コントローラー」「ジャーナリスト」。入り口のところでもらう用紙の色もそれぞれ違っており、ルールはそれぞれにあったスタンプを用紙に押してくるというものであった。僕たちは一番簡単だと言われた「選手」を選んで迷路に足を踏み入れた。
迷路はトウモロコシとヒマワリ畑で形作られているが、どれも背が高く(2メートル強)、背伸びをしてもジャンプをしても遠くを見渡すことが出来ず、畑は壁のようになっていた。その壁は太陽の光を受けて大きく生長している。もしかするとこの迷路が一般公開された7月21日と終了する9月ではその壁の高さも変わっているかも知れない。また見ればカボチャもなっていたが、それも非常に大きなものに生長していた。迷路の中央にある見晴台に登ってみたが、ただ畑が四方に拡がっているとしか分からず、道などは認識出来なかった。
迷路に足を踏み入れてから暫くすると、(僕たちにとって初めての)スタンプのポイントがあった。ここにはプレートが二本立てられてあり、一方はオリンピックに関する説明で、もう一方はそれに対する問題であった。その問題のプレートにはスタンプが2つあり、正しいと思われる方のスタンプを用紙に押していく。答えは説明を読めば分かるようになっていた。
上で僕たちは「選手」を選んだと書いたが、それぞれ選んだものによって集めるスタンプが違う。それぞれの選択によって用紙の色が違い、その用紙の色と同じ色枠の付いたプレートを探して、問題を解きながらスタンプを集めるというのがこの迷路のルールだった(問題のないスタンプ場所もあった)。ちなみに「選手」は緑色の用紙だったので緑色の枠が付いたプレートを探す。ただそれらは用紙表側のルールで、裏側にも別のものがあった。こちらは色々な色のスタンプを集めるというものだった。つまりスタンプ収集に関してだけでも、この迷路には2種類の楽しみ方があると言うことである。
ところで先にも書いたが、この日は雲一つない快晴で、風もほとんどなかったので実際の気温(当日の最高気温27度)以上に暑く感じられた。また迷路内には日陰になる場所もほとんどなく、休憩することが出来ず、ただひたすら次のスタンプを探して歩くといった感じだった。この迷路を最初に目の当たりにした時、友人と「(迷路は)それほど大きくない」ということを話していたが、スタンプを探して歩く迷路は実際のもの以上に広く感じられた。結局、必要なスタンプを全部集めるのに1時間半もかかってしまった。最終的には何処にどのスタンプがあるのかまで、ある程度分かるようになっていた。
スタート地点に戻り、両面にスタンプを押した用紙に名前などを記入して提出すると、小さい黄色の円盤形プレートが(景品として?)もらえた。これはやはりオリンピックということで金メダルを表しているのだろう。そういえばこの巨大迷路の背景に描かれた円盤投げの選手像はギリシャにある実物の100倍の大きさと説明があったが、迷路を訪れてみると、歩いている限りでは、この畑がアテネ五輪を表しているものかどうか全く分からなかった。いずれにしても迷路を出た時、何かをやり遂げたような達成感があった。
その後、来た時とは違う道を通って駅(港)の方に向かった。そういえばこの地にはミュンヘン近郊のカルテンベルク醸造所のビールを扱っているお店が多く、何カ所かでその紋章を目にした。というわけで、そのビールを扱っているビアガーデンで遅い昼食を取ることにした。そこで僕は
Koenig Ludwig Dunkel 王ルートヴィヒの黒ビールというものを注文した。このビールは現在のドイツで最も人気のある黒ビールの一つで、非常に伝統的なものである。元々ミュンヘンでビールといえば黒ビールを意味しており、1516年のビール純粋法制定から、その伝統は現在も受け継がれている。
遅い昼食を楽しんだ後、船を使ってミュンヘンに帰ることにした。しかし運行表を見ても、その時間通りには運行されておらず、結局船には乗ることが出来なかったので、来た経路を使って帰ることにした。時間的には次の船を待っても良かったのだが、風が冷たくなり、日中の気温が嘘のように肌寒く感じられ始めた。一日を振り返ってみれば、軽い気持ちで迷路を楽しみに来ただけだったのが、予想以上に長い一日となってしまった。しかしその分、過ごした時間も非常に楽しいものであった。
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