2004年9月18日(土)から26日(日)までテレージエンヴィーゼの南部分(120.000m2)で第123回バイエルン中央農業祭が開催された。テレージエンヴィーゼの北部分はオクトーバーフェストが開催されている。4年に一度開催され、今回で123回目を数えるバイエルン中央農業祭は「農業を体験し、そして楽しむ」をモットーに催された(出展者数は650以上)。
このバイエルン中央農業祭の起源はオクトーバーフェストと同じく皇太子ルートヴィヒ(後のバイエルン王ルートヴィヒ1世)とザクセン・ヒルトブルクハウゼンの王女テレーゼ・シャルロッテ・ルイーゼの1810年10月12日のご成婚にある。その際、競馬が行われ、市民はそれに熱狂したことから、翌年も同じく競馬が催されることになり、バイエルンの農業団体によって競馬、家畜市場、家畜表彰が行われた。バイエルン王マクシミリアン1世ヨーゼフも個人的に賞を与えた。そしてこの式典は翌1812年から中央農業祭と名前が付けられ、内容も家畜に関することだけでなく、農業機械や道具、農業製品の展示なども行われるようになった。
2004年9月26日、最終日である日曜日に僕は友人と一緒にこのフェストを訪れた。雨の日だったにもかかわらず、正面入り口横のチケット売り場では入場券を求める列が出来ていた。農業フェストと聞いて、僕自身はそれほど期待をしていなかったが、チケットを求める列を目の当たりにすると、このフェストが自分の想像を超えていて、何か大きな存在のようなものに思えた。ゲートをくぐると幾つかのテントが見える。その中には驚くことにビアテントまであった。
このバイエルン中央農業祭の展示は幾つかのテントと屋外でなされ、テント内では乳製品などの農業製品の販売や色々な調理器具の実演、展示がなされていた。特に実演を食い入るように見ている人が多かったのが印象的である。屋内展示場はどのテントも人で一杯で、コーナーによっては近寄るのさえ難しい場所があった。逆に屋外展示場の方は色々な大きさのトラクターや家畜の(清掃)道具などが展示されてあったが、雨が降っていたせいか、屋内に比べて人が少なかった。ただトラクターなどの乗り物は子供に人気があるようで、先を競って乗ろうとする兄弟の姿などを目にした。
ところで屋内展示場は人が多いと書いたが、これは天候の影響だけでなく、その展示の内容によるところがあるかも知れない。例えばミュンヘン工科大学のビール醸造科による出展ではヴァイエンシュテファンのビールが無料で振る舞われた。グラスに注がれる量はそれほど多くないが、非常に深みのあるビールを楽しむことが出来る。また食品に関するコーナーでは、それらが販売されているだけでなく、色々なものを試食、試飲することも出来た。そういえばフェスト終了間際になると、それらの食品が格安で販売されたが、時には「プレゼントだ!」といただくこともあった。
このフェストで個人的に一番驚いたのは、あるテントに足を踏み入れた時だった。そこには数種類の牛や馬、羊、鳥、豚などが飼育されており、またそれらは触れることが出来るほど近い距離にあった。オクトーバーフェストの直ぐ側にこれだけの動物がいることに驚いた。全部で約800の動物がいるとのことだが、それ故かテント内は動物くさい匂いが拡がっていた。ここでは子供だけでなく大人も楽しんでいるように見える。またそのテントの横には観客席を伴った広場(リング)があり、ここでは様々なイヴェントがなされたようだ。オクトーバーフェストの横にこの様なリングが造られているとは、全く想像出来なかった。
オクトーバーフェストの直ぐ側と書いた。隣で行われているオクトーバーフェストには世界各国から人が訪れていて、耳にする言語も様々なものがあったが、このバイエルン中央農業祭では、訪れているのは主にドイツ人(バイエルン人)で英語すらほとんど聞かなかった。前者が国際的な祭りであるのに対し、後者は地元の祭りといった感じだ。またオクトーバーフェストを巡回している警官は、周囲に目を配り何処か物騒な雰囲気があったが、中央農業祭の方を巡回している警官からは笑い声が聞こえてきており、それはこのフェストが如何に平和的なものか表現しているようでもあった。同じ敷地内で同じ時期に開催された二つのフェストが、これほどまでに違っているというのが面白い。
ところでこの農業祭において一番興味深かったのは、教会の塔の尖塔部分を実際に造っているところだった。ミュンヘンの聖母教会を代表として南ドイツで典型的なタマネギ型の塔を造っている。これが下で組み立てられて塔の上に運ばれるのか、それとも塔の上でこの作業がなされるのかは分からなかったが、いずれにしても実際に造っているのを見て、教会建築が少し身近になった気がした。
会場に足を踏み入れる前までは、それほど期待をしていなかったフェストだが、いざ訪れてみると時間が経つのも忘れてしまうほど興味深く、農業・林業、畜産業が非常に身近に感じられた。ところで入り口ゲートをくぐると正面に「エネルギーの塔」と呼ばれる高さ18メートルの木造の塔が目に入る。階段を登ればフェスト会場を一望出来る場所となっており、またここの内部には新しいエネルギー源に関する情報がある。会場を一望出来るだけでなく、同時に未来をも見ることが出来るようになっている。
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