すっかり秋の装いとなった2004年10月23日(土)、ミュンヘン工科大学ガルヒング・キャンパスが一般公開された。その日、僕はそのキャンパスに通う友人の案内の元、初めてその場所を訪れた。
ミュンヘン工科大学は1868年バイエルン王ルートヴィヒ2世によって設立され(当時は王立総合工科大学という名称で5学部、教授24人、学生約450人)、現在までに8人のノーベル賞受賞者を出した、バイエルン唯一の工科大学である(現在12学部、教授約400人、学生約20.000人)。
このミュンヘン工科大学の中央校舎は市内にあるが、一部の学部はミュンヘンの北東約15kmに位置するガルヒング市(かつては村)に校舎がある。ここは西ドイツ(当時)で初めて原子炉が出来た場所であり、現在は工科大学の幾つかの学部(化学、物理、機械、情報処理、数学)だけでなく、ミュンヘン大学(ルートヴィヒ・マクシミリアン大学)、マックス・プランク研究所、バイエルン・アカデミーなどの研究施設もあり、それらの分野に関してはドイツで最先端を行く研究施設地区となっている。
一般公開当日、友人が通う化学の校舎をまず訪れた。ここでは大講義室で公開実験が行われるとのこと。講義室に入ると既にそこは人で一杯で空席を探すのも難しかった。後部の方に空いている席を見つけて座ることが出来たが、実験が始まる頃には多くの立ち見が出るほど人が集まっていた。講義室は非常に角度があって後方でも教壇がよく見える構造となっている。また壁には元素表があり、今現在、化学と馴染みのない生活をしている僕は、それを見て少し懐かしさを覚えた。
化学の実験は、例えば講義室の照明の明るさを変えるなどして、見ていて非常にわかりやすいものが多く、その場にいた多くの子供たちだけでなく大人も大きな拍手をしながらそれを見ていた。この実験は化学の面白さを、特に子供たちに教えるには良い機会になったと思う。
同じように楽しむ子供が印象的だった場所は、情報処理と数学の校舎である。ここには実際に自分が触れることが出来るものがある。もちろん楽しめるのは子供だけではない。懐かしい玩具もあり、大人も例えば自身の子供の時を思い出しながら、楽しめるかもしれない。そういえばここでは、それぞれのテーブルに卒業年が書かれた紙が貼られてあり、同窓会も行われていた。その意味においても子供だけでなく、大人も楽しめる場所になっている。またこの校舎には新聞等で話題になった大きな滑り台がある。友人によると、以前これでケガをした学生がいたようだが、この日は子供や親子が楽しそうに何度も滑っている光景があった。
今回の一般公開は、僕のような全くの部外者でも気軽に楽しむことが出来、工科大学が身近なものに感じられた。また個人的には友人が通っているキャンパスや教室を見ることが出来、友人との距離が少し近くなった気がして嬉しかった。ところでこの日、その場にいる子供たちを見ていると、彼らが勉強という枠ではなく、興味として楽しんでいるように見えた。この中から将来のノーベル賞受賞者が出るかも知れない、そう言うのが大袈裟なことではないように感じられた。
以下の写真は全て2004年10月23日(土)に撮影したもの。
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