日記 ケーニヒ広場でのコンサート |
2005年7月17日(日)、英国庭園の日本茶室周辺で行われていた日本祭 Japanfest を見た後、僕は市内ケーニヒ広場に向かった。そこでソプラノ歌手 Anna Netrebko の野外コンサートが行われるからだ。といっても僕はチケットを持っておらず、チケット売り場で当日販売されるかも知れない学生券や立ち見券を求めて会場に向かった。 新聞等で「Anna Netrebko は、今、世界中で最も輝いている歌手の一人」と称されているのを証明するかのように、そのチケット代も他のコンサートに比べると高い。例えば、彼女は2005/06年シーズン、バイエルン州立歌劇場でヴェルディ「リゴレット」のジルダを歌うが、立ち見でも20オイロするという、一般的に料金カテゴリー表には載っていない特別カテゴリーとなっている。 この特別カテゴリーの最も高い席は240オイロし、これはシーズンに行われる演目としては、おそらく過去最高だと思われる。先シーズン(2004/05年)、最も高かったのが新演出のヴェルディ「リゴレット」初日で、それでも最高190オイロだった。 シーズン中よりも、更に名の知られた歌手を呼ぶといわれるオペラフェストでも、そのカテゴリーのものは滅多にお目にかからない。今年(2005年は6月27日(月)から7月31(日))のオペラフェストでもヴァーグナー「ニュルンベルクのマイスタージンガー」、ヴェルディ「運命の力」「オテロ」「リゴレット」の190オイロが最高で、ここ数年で特別カテゴリーだったのは、2002年オペラフェストで Plácido Domingo が歌ったチャイコフスキー「スペードの女王」くらいである。 そういった最も高い料金カテゴリーに入っている演目を歌う Anna Netrebko の野外コンサートは、オペラ同様非常に高いものになっている。ケーニヒ広場入り口にあるチケット売り場で、期待していた学生券や立ち見券が販売されているか伺ったが、それらはなく、また最も安い44,5オイロのチケットも既に売り切れ、当日最も安いチケットは60,5オイロのものということだった。 ところで今回のコンサートは開演が20時で、開場が18時となっている。僕は19時頃会場に向かったが、その頃、多くの人がケーニヒ広場周辺で場所取りをしていた。広場の中に入らず、外で聴こうとしている人達である。ケーニヒ広場でコンサートがなされる場合、フェンスが設けられそこにシートがかぶせられて、外からは簡単に見えないようになっているが、外にいてもその音は聞こえ、コンサート及びその雰囲気を楽しむことが出来る。 僕も広場周辺でその音を楽しもうかと考えたが、とりあえず「チケット求む」をすることにした。回りを見てみると2、3人同じようにしていたが、僕と同じように、チケットを売るという人を簡単には見つけられないようだった。今の時期にバイエルン州立歌劇場やプリンツレゲンテン劇場で行われているオペラフェストは、公演が7月にもかかわらず、チケットの販売が2005年1月に始まった。人気演目ではチケットを押さえておかないと(購入しておかないと)、売り切れになってしまう可能性があるため、先の予定は分からないものの、とりあえずチケットを買ったという人もいるのだろう。公演日当日には、来られなくなった人のチケットが売られていて、「完売」となっていても何とかチケットを購入出来る可能性がある。しかしこのケーニヒ広場でのコンサートは、チケット販売の期間と公演日が近いため、オペラフェストの時のように、来られなくなったという人が少ないのかも知れない。それ故、売っている人を見つけるのも難しかった。 しかし運良く、20時開演の少し前に僕はチケットを売っている人を見つけることが出来た。家族連れで来ていた人達で、結局半額以下でチケットを売っていただいた。場所に対しては全く拘りはなかったのだが、座席表を見るとブロック C3 と中央よりの良い場所だった(下の写真参照。写真上が舞台)。 20時の開演前に広場に入れたが、広場は既に人で一杯で、聞けば当日の座席数は15.000ということ。自分の席を探して席に着いたが、入り口横から見て大きいと感じていたステージが小さく見える。だがどうやらステージの左右に大きなスクリーンがあって、そこにステージの模様が映されるよう。そして20時を少し回った頃、ステージの幕が開き、舞台上にいるオーケストラの人達が見えた。この日の出演は、Anna Netrebko(ソプラノ)、Ramón Vargas(テノール)でオーケストラは Fabio Luisi 指揮の Wiener Symphoniker である。 指揮者 Fabio Luisi が出てきて、静かに演奏が始められた。音はマイクによって拾われ、スピーカーから流される。場所が広い野外なので仕方がないが、生演奏の迫力、オーケストラのダイナミックさがそれによって失われたような気がして、少し残念な気もした。しかしそれでも Fabio Luisi の躍動感溢れる指揮から生み出される丁寧な音作りが感じられ、オーケストラの巧さが感じられた(1曲目は Rossini / Wilhelm Tell / Obertüre)。 1曲目が終わると、ステージ上に盛大な拍手とともに Anna Netrebko が姿を現した。ちょうどその頃、ステージ後方から夕日が差し込んで非常に眩しく、まるで自然をも演出に組み込んだかのように、彼女はヴェルディ「La Traviata」のヴィオレッタを歌った。この役で彼女は2003年、バイエルン州立歌劇場でデビューをしたので、それが挨拶代わりのようにも見える。その後、彼女は Ramón Vargas と共に、ヴェルディだけでなく、プッチーニ、ドニゼッティ、ビゼー、グノーなどのアリアを歌った。
Anna
Netrebko の非常に柔軟かつ安定感のある歌声と、Ramón Vargas の伸びのある高音が、音の透明感を生み出し、野外コンサートならではの広大さを感じさせた。途中に約30分の休憩を挟み、23時過ぎまで行われたコンサートの後半では、陽もすっかり落ちて、雲一つない夜空に幾つもの星が輝いていた。
Anna
Netrebko の澄み渡る声が何処までも続いているかのような印象を覚えた。 以下の写真は全て2005年7月17日(日)に撮影したもの。 |
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(2005年7月18日) |
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