2006年9月17日(日曜日)、オクトーバーフェスト2日目のイヴェントである民族衣装パレードが行われた。このパレードは1835年にバイエルン王ルートヴィヒ1世と王妃テレーゼの銀婚式の際に初めて行われたもので、1950年からは毎年行われるようになった。パレードはマックスモニュメントをスタートし、オクトーバーフェスト会場であるテレージエンヴィーゼに辿り着く7キロのコースで行われる。今年はドイツ国内や周辺各国から約9千人がそれぞれの民族衣装を着てパレードをした。
自分は午前9時過ぎにパレードが行われる場所に向かった。民族衣装パレードが始まる時間は午前10時だが、その30分前、つまり9時半からスポンサー(南ドイツ新聞、BMW、ミュンヘンTVなど)のパレードが行われるからだ。ところで4年前からパレード前半のコースが一部変更された。正確にはスタート地点が変わった。以前は凱旋門をスタートしオデオン広場まで(1キロ)をコースとしていたが、変更後はマックスモニュメントからオデオン広場(2キロ)へ向かうコースとなった。パレードの距離が長くなることによって、沿道でパレードを見る人も分散し、パレードが観やすくなった。スタート地点の変更は、おそらくパレード参加者の待機する場所を確保するためだろう。
パレードを観るために自分は、マックス・ヨーゼフ広場とオデオン広場の間に位置するレジデンツ通りに向かった。変更されて新にパレードコースになった場所の一つである。ここはパレードコースの中で最も通りの幅が狭い箇所で、パレードする人々がまとまっていて全体を観やすく、同時にパレードをする人との距離が近い。またパレードが始まって直ぐの場所なので、まだ列がばらけていない。
当日の気温は15度程で風もなく、パレードが始まるのを待つのも苦ではなかった。年によっては、寒くて凍えるようなときもある。ただ空を見上げればそこには灰色の雲が拡がっており、今にも雨を降らせそうな空模様が気になった。午前9時40分頃、遠くからブラスバンドの音が聞こえてきた。徐々にその音が近づいてくる。バイエルンでよく聴かれるもので馴染みのある音楽。スポンサーのパレードが始まった。10時少し前、その最初の一団は僕の前を通り過ぎていった。
スポンサーのパレードが終わって暫く静寂があった後、馬に乗った警官隊が近づいてきた。時間は午前10時20分頃。(自分にとっての)民族衣装パレードの始まりである。それに続いて、馬に乗ったミュンヘン小僧(に扮する女性)と続き、各団体のパレードが続いた。その中には前日と同じようにビア樽を積んだ化粧馬車もあった。馬に着けられた装飾が、ガランガラン、ガシャンガシャンと様々な音を立てている。そして馬の蹄の音。そこにパチン!パチン!と鞭の音が聞こえてくる。
ブラスバンドが続く。その中でも100人以上のブラスバンドになると、とにかくものすごい音量である。僕がパレードを観るのに、この場所を選んだ理由の一つにその音の迫力が上げられる。通りが狭いので音が幾重にも響き、また時には太鼓が叩かれることなどによって、自分が着ている衣服が振動することもあったり、パレードの迫力を間近に感じられる。
ところで昨年の民族衣装パレードは連邦議会選挙の日と重なっていたので、バイエルン州首相がシュトイバーが馬車で通り過ぎるときには大きな声援があった。そういえば2002年のパレードも連邦議会選挙と日が重なっていたが、その時はシュトイバーがキリスト教民主・社会同盟の首相候補であったので、かなり大きな声援が沿道から飛んでいた。また沿道が盛り上がるのは、ミュンヘン市長クリスチャン・ウーデの乗った馬車が通るときだ。この時も大きな声援が聞こえる。
民族衣装パレードは、その名前の通り、それぞれの街や団体の様々な民族衣装を見ることが出来る。男性の方は総じてシンプルだが、女性の衣装は非常に凝ってあり、観ていて興味深いものがある。例えば同じような色調でも帽子や前掛け?のデザインが変えられてあったりする。2006年のパレードは最後に馬に乗った警察、清掃車と続いて12時半頃終了した。不安だった雨も降らず気温も穏やかだったので、約2時間半続いたパレードもあっと言う間に終わった気がした。
民族衣装パレードを観て毎年思うのは、伝統や文化の大切さだ。この民族衣装パレードには色々な国や地域からの参加がある。そして民族衣装を見ているとその多種多様さに驚く。それぞれの民族衣装は、言い換えればそれぞれの国・地域の歴史や誇りでもあるかも知れない。拡大しているEUの中で、今後はこれまで以上に人や物が自由に行き来し、同時に様々な文化の交流が生まれる可能性があるが、そういった状況の中で、それぞれの地域が独自の伝統・文化を育て、後世に伝えていくことが大切さが改めて思われる。独自の文化、その一つが民族衣装かも知れない。
以下の写真は全て2006年9月17日(日)に撮影したもの。
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