日記 アルプスを望む休日 |
久しぶりに青空が拡がった。雲は出ているものの、ブルーという言葉が似合うような濃い青色の空が拡がっている。部屋から歩いて20分程、ゆっくり歩いたとしても30分程で行けるオリンピック公園を散歩した。 家を出る前は快晴の空が部屋の窓から見えていたが少し歩いているうちに薄雲が拡がってきた。風も強い。しかしその青空に相応しいような強い日差しがあったので、歩いているとその強い風も非常に心地良く感じられた。 休日のオリンピック公園は散歩をしている人が多かった。芝生のところで寝転がっている人、本を読んでいる人、お茶を飲んでいる人などが見受けられた。また日差しが強いからか上半身裸になっている男性や薄着の人達の姿もあった。また凧揚げをしている人も多い。強い風が良いのだろう。空を泳ぐそれらを見ていると空の青さと高さが感じられる。公園を訪れる人達はそれぞれの晴れの休日を楽しんでいるようであった。 ところでこのオリンピック公園は第二次世界大戦の空襲によって破壊された家々の瓦礫を集めて造営された公園である。そしてその中にオリンピック山と名付けられた小高い丘がある。天候によってはそこから遠くにアルプスを望むことが出来る。僕はその丘の山頂を目指して公園を歩いた。 そこへの登り道は何カ所もあり、舗装されている道もあれば、石畳の細い道もある。家から行くとその細い石畳の道を上がるのが最短距離なのでそこを歩いた。そこは背丈程ある草木が両側に生えており、あまり景色を楽しむことが出来ない。風があるからか、何処からか草木の香りがしてくる。 石畳のその細い道はカーブを幾度も描きながら山頂に続いている。普段はそこで人とすれ違うことはほとんど無いが、この日は休日で天気が良かったからかすれ違う人だけでなく、自分の前にも後ろにも数人の人が歩いていた。上から降りてくる人は急な石畳の道で滑らないようにゆっくりと歩いてくる。時々立ち止まって道を譲る。「ありがとう」というその一言が、青い空のように清々しく感じられる。 少し開けた場所に出た。そこから遠くを望むとアルプスが遠くに見えている。空気の状態が変化するのか時々、その山々が濃く見えるときもあれば空気中に薄い膜が張ったように見えるときもあった。 山頂に近づくと、上から様々な声が聞こえてきた。その小さな山頂、そこは石畳で展望台になっているが数えると50人近い人達がその場所で、そこから見える風景を楽しんでいた。 ここまで上がってくると流石に息もきれいている。周りの人達もそうだ。自転車を押して上っている人の姿もある。そして吹き抜ける風。それが非常に心地良い。半袖でも十分な程に少し暑く感じられる。 近くにいた年輩の女性達が話しているのが耳に入った。「昔はもっと緑があったけど。」「それでもここに来て本当に良かったわ。こんな綺麗なミュンヘンが見られるなんて」と話しながら聖母教会やドイツ最高峰ツークシュピッツェの方を指さし何かを説明している。 山頂からはアルプスだけでなく、360度を見渡すことが出来、そこは非常に開放感のある場所に感じられる。ゆっくりと大きく深呼吸をした。アルプスと反対方向を見れば今年ドイツで行われたサッカー・ワールドカップの会場になったアリアンツ・アリーナのツェッペリン号のようなその外観が太陽の光を受けて眩しく光っているのが見える。 オリンピック公園の方を見ると、そこにある小さな湖ではボートを漕いでいる人の姿があった。山頂の展望台には多くの声が響いていたので、ボートの静かな動きを見ているとなおさら、のんびりとした時間に感じられた。 そして旧市街地方面を見る。塔の高さが100メートルある聖母教会の巨大さが改めて感じられる。旧市街地内では聖母教会の塔が望めるように、それぞれの建物の高さは36メートルまでと市の条例で決められているので、なおさら教会の存在感が感じられる。言い換えればそれはミュンヘンにおけるカトリックの強さをも象徴している。 陽が傾いてきて、少し影が長くなってきた。空には薄い白い雲が拡がっているようにも見える。その中に一本の飛行機雲が見えた。太陽の光を受けてそれだけ白く輝いている。それはどこまで続く、非常に直線的な雲だった。 |
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(2006年10月22日) |
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