やまねこの物語

日記 のんびり

ドイツに来た頃よく思っていたのだが、例えば歩行者天国などを歩いているとき、ドイツ人の歩くスピードが遅すぎる!と思ったことが何度もあった。よく人を追い抜いて歩いた。自分としては普通に歩いているつもりだが、すぐに前に人に追いついてしまい、強引に追い越していく。別に前だけ向いて突進しているという感じでもない。時々お店のショーウィンドウも眺めたりしている。それでも僕の歩くスピードが速い。僕が早いと言うより、ドイツ人が遅いのだと思う。のんびりしているというか。

電話の呼び出し音もそうだ。日本だと電話の呼び出し音は、「トゥルルルルル、トゥルルルルル、〜」と、まるで「電話ですよ!早く電話に出なさい!!」といわんばかりだ。「トゥルルルルル」と「トゥルルルルル」の間は一秒もない。ところがドイツの場合は「トゥルルルルル」のあと、次の「トゥルルルルル」までおそらく一秒以上あるだろう。だから僕はドイツに来た最初のころ、「あれ?電話が切れた!」と思ったことが何度もあった。と思った後にまた呼び出し音がなる。電話の呼び出し音は日本と同じ音が鳴っていても、全然緊張感がない。

日本で電話が鳴った場合、たいていの場合は、すぐに受話器を取りに行く。部屋の中を走ることもある。でもドイツの場合は、(必ずしもみんながそうだと思わないが)、呼び出し音がなってから、「おやおや。電話だ。仕方がない。電話を取りに行くか。」というような感じだ。だから電話をかけてきた相手も、相手がすぐ出ないからといって電話を切ったりしない。

その他、例えば工事ものんびりしている。働いている人がのんびり働いていると言うのではない。期間が曖昧なのだ。例えば日本だと、「工事期間はいついつ迄」と決まっていると、ちゃんとそれに合わせて工事がなされる。しかしドイツの場合、「それはあくまでも予定であって、それまでに終わると保証しているわけではない」といった感じだ。これはもしかすると、ドイツといっても地方によって違うかもしれないが。

そんな感じだから、例えば観光名所でも「無期限工事中」というのが多い。先日行って来たシュライスハイム城は一部工事中だ。僕が持っている本には、昨年中に工事が終わっていることになっている。ところが実際行ってみるとまだ工事中だ。管理の人に聞いてみると、来年中には工事が終わると言っていた。本当だろうか。

ところで、ドイツはサマータイム制を導入していることもあって、この5月の時期でも夜8時を過ぎてもまだ明るい。だから普通の人は5時とか6時に仕事が終わって、そのまま散歩したり買い物したりする人が多い。午後5時とか6時は夕方というより、まだ午後の一部で全然夕方といった感じではない。陽も高い。

ミュンヘンは街の3割以上が緑地だと聞いた。至る所に緑がある。芝生や木々、森や公園など。ドイツの人は散歩や日向ぼっこが大変好きなようだ。休日ともなると、どこの公園に行っても人が大勢いる。しかし公園の大きさが、ものすごく広いので、ごちゃごちゃしていると言った感じはない。みんな思いっきり羽を伸ばしているというような感じだ。

僕もドイツに来てから散歩する時間が増えた。その時思ったのだが、ドイツ人は「のんびり」しているというのではなくて、時間に対する「ゆとり」を持っているのではないかと思った。だから銀行やお役所でかなりの待ち時間があっても、そんなに怒ったりしないんだと思う。(ま、これは効率の問題もあるけど。)それからドイツの銀行やお役所、また一部のお店は昼休みを取る。1、2時間くらいのお昼休みだ。小学校なども普通は午前中で授業が終わる。こんな感じだから、ドイツ人は日本人ほど「時間に追われてる。」と感じないようだ。夏、ドイツにいると、ものすごく一日が長く感じる。ゆとりがある。歳を取るペースが遅くなりそうだ。

公衆電話

ドイツの公衆電話
ドイツテレコムの色はピンク。

 (2000年5月9日)

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