やまねこの物語

日記 街角の本屋

本屋大学周辺には幾つもの本屋が並んでいる。専門書ごとの本屋、美術関連の本屋。しかし時代の流れか、そういった本屋も徐々に姿を消していると言うこと。

大学周辺にあるのは本屋だけではない。カフェやジーンズを売っているお店が建ち並ぶ。人によれば、この一帯も随分と様変わりしたとのこと。5年、10年、20年、絶えず変化しているらしい。それだけ街が生きているのかも知れない。

その時の流行りの本を並べている本屋もあれば古書を中心に扱っている本屋もある。窓越しに見るとどの本もかなりの値が付いている。

バスが来るのを待つ間、近くの本屋を覗いた。自分の好きな建築関連の本が並ぶ。中でも大きな写真集が魅力的に映る。

別の本棚に目をやれば、Haruki Murakamiと札の書かれた段があり、そこには彼の本が並んでいた。どれもドイツ語訳されたものである。一人の男性がその中の一冊を手にとってパラパラとめくっている。やはり「Kafka」の文字に惹かれたのだろうか。

しかしどの本屋でも、お店の中はしんとしていて本独特の匂いが漂っている。特に古書を扱うお店では古本独特の少し酸っぱさがあるような匂いがしている。

本屋の中はまるで時間が昔から進んでいないような錯覚に陥る程、外とは別世界を創り出していた。店内から外を見ると、窓越しに人の行き交う姿が見える。その無言の慌ただしさが、なおさら本屋の静けさを強調しているようでもあった。

しばらく本屋で時間をつぶした後、ドアを押して外に出た。振り返ってドアがゆっくりと閉まるのを見ているときルートヴィヒ教会の鐘の音が聞こえてきた。本屋の入り口で立ち止まって、教会の方を見る。ちょうどその時、店内から人が出てきた。先程、「Kafka」の本を手に取っていた男性だ。彼は本屋の袋を下げていた。


写真はこの日記当日に撮影したもの。

(2006年11月10日)

 

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