やまねこの物語

日記 街頭

先日、マリエン広場近くのデパートへ買い物に出かけた。その時マリエン広場を横切ったのだが、広場にはいくつもの人だかりがあった。何気なしの一つの人の集まりのところへ行くと、そこでは一人の長髪の男の人がアコーディオンの演奏をしていた。そこに集まっていた人は、みなその演奏を聴いていたのだ。その演奏はものすごく格好いいもので、バロック音楽に影響を受けて自作した曲を披露しているとあった。数分間その演奏を聴いていた僕は、偶然その人の輪の中に学校の友人を見つけて声をかけた。お互い「すごい演奏だ」などと話して僕はその場から離れて買い物に出かけた。

約3時間半後、僕は買い物を終えて、マリエン広場に戻ってくると、まだ人だかりが出来ていて、その真ん中では、さっきの人が汗だくになりながらアコーディオンを弾いていた。そこの人の輪を見てみると、まださっきの友人もそこにいた。その友人はずっと、この人のアコーディオンの演奏を聴いていたらしい。しかも演奏の合間にその長髪の人が売る、その人のCDをその友人は買っていた。サインも貰ったようだ。友人はとってもアコーディオンに魅了されたらしい。

その友人はモンゴル出身だ。その友人によるとモンゴルではあまりアコーディオンはメジャーではないらしい。考えてみると日本でも、アコーディオンはあまりメジャーではない。世界で活躍する有名な人がいても、日本ではアコーディオンを弾く人をあまり目にしない。僕も小学生の時、運動会か何かで演奏する機会があったくらいで、それ以後アコーディオンに触ったこともない。日本ではその音の大きさからか家で練習するのは難しいのだろう。ドイツに来て思ったのだが、街頭でアコーディオンを演奏している人をよく目にする。

ところで、日本では法律など色々問題があって、街頭で演奏やパフォーマンスをするのは難しいと聞いた。でもドイツではそのようなことは、あまりないらしい。人は自由に演奏していたり、パフォーマンスをしたりしている。特に休日になるとその数はものすごい。先に書いたアコーディオンやヴァイオリン、チェロなどの楽器の演奏、一輪車に乗る人、パントマイムをする人、パントマイムは、特にロボットのような動きをする人に人気があるようだ。

それ以外にもグラスハープをやってる人や巨大な絵を描いている人、演説している人、そういえば冬の寒い時期に、上半身裸になってお祈りをしている人もいた。さまざまなパフォーマンスが繰り広げられている。場所もマリエン広場など街の歩行者天国のところだけでなく、大きな広場や地下鉄の駅など様々なところで行われている。

人に自分の特技を披露したいという人や、本番を前にして緊張しないよう練習的な人もいると思う。通行人の方は、最初は野次馬的にのぞき込んだりするが、もしそのパフォーマンスがよければ、前に置いてある箱の中に小銭を入れたり、その人が販売しているCDや絵を購入したりする。つまり、街頭活動は宣伝の場だ。

先日、カール広場からマリエン広場まで延びる歩行者天国を歩いているとき、ある人だかりから奇妙な音が聞こえてきた。そこではモンゴル人のグループが民族楽器を演奏していた。モンゴルの民族楽器を使ったジャズだった。おそらくオリジナルと思われる曲の合間に、例えばマイ・ウェイのような有名な曲も演奏していた。でも一番興味を惹かれたのが、モンゴル独特のホーミーのような声だ。人の声で、弦楽器とも笛とも聞こえる音を出すのだ。そこで聴いていた人たちも、「一体あれは何だ?」という感じで興味深く耳を傾けていた。そんな音で歌詞も聞こえてくるから、ものすごく興味深いものであった。

そのモンゴル人のグループはドイツのヴュルツブルクという街を本拠地にして活動しているらしい。演奏の合間にCDが販売されたのだが、僕は興味深いと思って一枚購入した。結構色々な人が購入しているようだ。僕もそうだったが、そこにいる多くの人にとって、その声は何とも言えない音楽だったのだろう。実際に生で聴いてみて、その面白さが分かった。いずれにしても、こういう形で色々な音楽や芸術に触れることが出来るのは素晴らしいことだと思った。

歩行者天国 

カール広場からマリエン広場まで延びる歩行者天国
写真左は聖ミヒャエル教会

 

歩行者天国

カール広場からマリエン広場まで延びる歩行者天国
それぞれの街灯の下にゴミ箱がある

 

モンゴル人の演奏

モンゴル人グループによる
民族楽器によるジャズの演奏

 

 (2000年6月13日)

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