やまねこの物語

日記 “ドイツの中の日本”

2000年7月2日(日曜日)、ミュンヘン音大で“ドイツの中の日本 Japan in Deutschland”と題されたイベントがあった。これは今回限りのイベントで、ミュンヘン音大と国際交流基金、在ミュンヘン日本国総領事館が協力して行われた。発起人はザイフェルト Leonhard Seifert 氏。この人は日本に大変関心を持っておられていて、かなりの数の浮世絵を収集されている。今回のこのイベントの内容は楽器演奏(コンサート)と浮世絵の展示だ。ザイフェルト氏所有の浮世絵が展示されていた。またそれらのカラーコピーも一枚10マルク(約500円前後)で売られていた。普通の白黒コピーは無料。結構綺麗だったので僕は数枚購入した。

ところで楽器演奏の方は3つの部に分かれていて、第一部が「日本人作曲家の作品演奏」、第二部が「日本古来の楽器演奏」、第三部が「日本人によるドイツ人作曲家の作品」となっている。第一部の「日本人作曲家の作品演奏」とは現代作曲家の音楽、つまりピアノやフルートなどの作品演奏。第二部の「日本古来の楽器演奏」とは琴や三味線の演奏。第三部はドイツ人作曲家、バッハやベートーベンなどの作品演奏だ。第一部と第三部はミュンヘン音大に在籍している日本人学生が演奏し、第二部は日本から招待されたゲストが演奏する。

このイベントには日本人が多く携わっているので、日本人が多いというのは予想できたが、会場には日本人以上にドイツ人の方が多くいた。全体的に見ると日本人の数は少ないように見えた。コンサートはミュンヘン音大の大ホールで行われる。ここは約600人、入ることが出来るがこの日はだいたい400人前後の人が入っていたようだ。正直なところ、僕は、聴きに来る人のほとんどが日本人ではないだろうかと、心配していた。僕は企画者でも出演者でもないのに。でもそれに反して結構な数のドイツ人の方がおられたので嬉しかった。

第一部は「日本人作曲家の作品演奏」ということで、ピアノやフルート、クラリネットなどによる作品が演奏された。正直なところ、メロディーがない(?)音楽、つまり現代音楽、僕には理解するのが難しかった。自分の中のイメージでは、「走る幾何学模様」といった感じだ。演奏されている方は皆上手かった。が、難しかった。もしかするとこれらの音楽は、日本が文明開化し、「日本」という枠にとらわれなくなった音楽と言えるかもしれない。と、そんな中で山田耕筰の歌(作詞は北原白秋)の演奏があった。これは着物を着て歌われた。ソプラノの方がでてこられた瞬間、今まで落ち着いていた観客席がざわつきだし、歌われている最中もフラッシュがたかれていた。それ以前まで演奏された方は、皆ドレスだったのでインパクトがあったのだろう。しかもオレンジとも赤ともとれる色の着物。映えていた。個人的にはこの山田耕筰を歌われた方と、ハープを演奏された方が印象に残った。

ここで第一部が終わる。午後8時から始まった演奏会はすでに午後10時前。普通のコンサートならば、終わる時間帯だ。ここで25分間の休憩があった。休憩は第二部のあとにも約40分取られた。この二つの休憩では、日本領事館の料理人による料理が無料で振る舞われた。お寿司やたこ焼きなど日本の料理が多く出されていた。僕は「巻きずし」2ヶと「たこ焼き」を1ヶを食べただけだったが、とても美味しかった。ドイツ人のおばさんも大変満足していると僕に話しかけてこられた。

そんなこんなで第二部が始まったのだが、これは琴や三味線による演奏で、日本でも滅多に聴けないものを聴くことが出来て良かった。演奏後ロビーで売られていたCDも結構売れていたようだ。もしかすると、この日聴きに来ていた多くのドイツ人は、これを望んでいたかもしれない。いかにも日本的だ。演奏時間は1時間以上続いて、第二部が終わったのはすでに午後11時半。第三部の始まる時間は日付が変わって午前0時10分だった。外は雷をともなった雨になっていて、しかも日曜日で電車などの最終がなくなる時間帯だったので、ほとんどの人は日本料理を食したあと帰っていった。第三部が始まったときには約100人前後の人が残っていた。でも第二部までが日本の紹介のような感じだったので、聴く人それぞれがどの様な感想を持たれたかは分からないが、日本を知ってもらうという点では、良かったのかもしれない。

もちろん今回の出演者には第三部しか出ない人もいる。今回企画面の甘さからか、日付が変わってまでも演奏が続くとは誰も予想していなかった。演奏者や領事館の人たちもそうだったらしい。でも第三部はバッハ、ベートーベン、ブラームス、シューマン、R.シュトラウスなど馴染みの作曲家の作品が多かったので、個人的には結構楽しむことが出来た。第一部で着物を着て歌われた方は、この第三部でR.シュトラウスを歌われたが、その時間が午前1時を回っていたにもかかわらず熱唱されていた。歌以外、個人的にはクラリネットの演奏が良かった。出演者も客席の人も眠くなってきた午前1時半過ぎ、コンサートは終わった。出演者も観客も企画に携わっている方もお疲れさまといった感じだった。

この日は音大の録音システムが不調だったようで僕は数人の出演者の方から、録音を頼まれていた。それを渡して、人としゃべったり色々していたら、当然最終の電車の時間も過ぎていた。タクシーを何とか捕まえて、家に帰ると午前2時をすでに回っていた。この企画自体はとても面白いものだったが、出演者や観客にかなり負担があった。みなさん、お疲れさまでした。

注)着物を着て歌われたのはミュンヘン在住の歌猫さん。

浮世絵の展示 

浮世絵の展示

 

演奏会の模様

演奏会の模様

 

 (2000年7月4日)

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