やまねこの物語

日記 ミュンヘン対ミュンヘン

この日記は「バイエルン優勝!」「サッカーな日」関連です。

2000年10月21日土曜日、ミュンヘンのオリンピックスタジアムではここを本拠地とするブンデスリーガ(ドイツリーグ)1部のサッカーチーム、バイエルン・ミュンヘンの試合があった。ブンデスリーガの試合は土曜日に行われ、このスタジアムで試合があるときは、ものすごい数のサッカーファンがここを訪れる。ミュンヘンで試合があるとき、その前日の金曜日から街の雰囲気がかわる。特に街の中心マリエン広場周辺ではバイエルン・ミュンヘンと対戦するチームを応援する人がユニホーム柄の服を着て集団になって奇声をあげながら歩いているので、かなり目立つ。普段は街頭で音楽の演奏などをしている人やそれを聴いて楽しんでいる人など、おおらかな雰囲気があるのだが、相手チームを応援する人の集団は笛を吹いたり、大声を上げて歩いたりするので街の雰囲気は、多少怖いといった感じになる。

ドイツだけでなくサッカーファン同士の争いはひどいものがある。それらの中心は若い人だが時には、いい年のおじさんまでも参加している。ヨーロッパではプロサッカーとしての歴史が長い分、それだけ色々な世代のファンがいるのだろう。ミュンヘンの街中で相手チームのファンが行進しているとき、地元のミュンヘンファンと衝突にならないよう警官がよく出ている。試合の日の土曜日は大変だ。特にオリンピックスタジアムのあるオリンピック公園に通じる地下鉄3番線(U3)は、ミュンヘンを応援するファンと相手チームを応援するファンで、異様な雰囲気になる。友人なども土曜日はできるだけ地下鉄3番線に乗らないようにしているとのことだ。やはりその雰囲気は非常に怖い。スキンヘッドで色々派手な服を着た体の大きな人たちの集団は異様だ。みな大声で歌ったりしている。

といっても全てのサッカーファンが怖そうな雰囲気というわけではない。歴史が長いぶん、年輩の女性の方や親子などの姿もある。先日の土曜日、僕は買い物から帰ってくるとき、ファンの人が駅からスタジアムまで歩いていく光景を目にした。その日は比較的天候も良く、また寒くもなく過ごしやすい一日だったので僕はオリンピック公園まで散歩することにした。僕の家からオリンピック公園はものすごく近い。でもスタジアムは奥の方にあり、地図を見てみると公園の入り口からスタジアムまで約1キロ前後あるようだ。当日公園のバス駐車場はそのファンを乗せた大型バスがいっぱい止まっていた。おそらく100台以上あったと思う。

公園をスタジアム方面に歩いて行くとすでにサッカーの試合が始まっているのか、歓声の地響きみたいなものが聞こえてくる。特に(おそらく)シュートチャンスだったりすると、何とも言えない地響きが公園内に響き渡る。僕はチケットを持っていないのでスタジアムには入ることが出来ないが、柵の間からスタジアムを覗くことができた。といってもグランドは全く見えない。客席の一部とスコアボードが見えるくらいだ。同じように柵を覗いていた人たちが話していた。「ミュンヘンとどこが対戦してるんだ?」「敵はミュンヘンだ。」というような会話が聞こえてきた。どうやらミュンヘンダービーだったようだ。ブンデスリーガ1部にはバイエルン・ミュンヘンともう1チーム、ミュンヘンを本拠地とするチームがある。1860ミュンヘンだ。どちらのチームもミュンヘンにホームグランドを持っている。僕が見たりする限り、ミュンヘンでは両方のチームともファンは多いが、最近の強さからかバイエルン・ミュンヘンの方がファンが多いように見えた。このカード、おそらく日本のプロ野球で言うなら巨人対日本ハムといったところだろうか。(リーグは違うが。)

このスタジアムは約78000人収容することができる。この日は満員だったようでスタジアムの外には、スタジアムに入ることができない両チームのファンが溢れていた。おそらく当日券を考えて会場に来たのだろうが、そこはすでにミュンヘン市民で一杯だったようだ。スタジアムの周りには色々な屋台がでてビアガーデンもあった。そのスタジアムの横にはオリンピック湖というものがあり対岸には海抜564メートルのオリンピック山がある。その日はミュンヘン市民にとって、お祭りのような一日だったから、その対岸の山の上から双眼鏡などで覗いている人の姿を大勢見ることができた。きっとあの山の方からはスタジアム内が見えるに違いないと僕も山を登ってみたのだが、山頂に着いてもスタジアムのグランドは見えなかった。ほとんどの人はラジオを持参している。でもその場所でも会場の地響きのような雰囲気を十分に味わうことが出来るから、双眼鏡でスコアボードを眺めてラジオを聴いている人が結構いた。イス持参で見に来ているグループもあった。

山の方から見るスタジアムは、主に観客席中心だったが、試合の経過によってその観客が動くのがおもしろい。というのはどちらかに点数が入ったりすると、スタジアムの半分側で旗が振られる。逆にもう一方のチームに点数が入ると、スタジアムの反対側で旗が振られる。その日は結局バイエルン・ミュンヘンが1860ミュンヘンを下したようだ。試合が終わったころ僕はスタジアム近くを散歩していたのだが、普段のサッカーの試合とは違う光景を目にした。普段はおそらく試合後ファン同士の争いなどもあるのだろう。いつもパトカーのサイレンが聞こえてくる。警官の数も非常に多い。

ところがこの日は同じミュンヘンを本拠地とするチーム同士の戦いと言うことで、ファン同士がいがみ合う怖い雰囲気はなく、逆におおらかな微笑ましいような感じだった。例えば大学生くらいのグループがいたのだが、グループの半分の人たちはバイエルン・ミュンヘンの、もう半分の人たちは1860ミュンヘンのユニホ−ム柄の服を着ている。みなが肩を組んで歩いていたりするのだ。このような光景をこの日は何度も目にした。警官もにこやかに歩いている。サッカーファンをよく見てみれば、みなそれぞれ色々飾っている。特に金髪を1860ミュンヘンのカラーである水色に染めている女性の姿が印象的だった。ファンもこの日を楽しんでいるように見えた。勝負の世界なので勝ち負けはあるが、試合が終わった後の雰囲気は殺気だったものが全くなく、みなが楽しんでいるというような雰囲気だった。先日終わったオクトーバーフェストが色々な国や地域から来た人のお祭りという感じがしたが、このミュンヘンダービーはミュンヘン市民のお祭りという感じがした。

(ここにある写真は 2000/10/21 のものです。天候、晴れ。)

スタジアムに入ることができなかったバイエルン・ミュンヘンファン

スタジアムに入ることが出来なかった
バイエルン・ミュンヘンファン

柵から覗いたスタジアム

柵から覗いたスタジアム(78000人収容)
 

山から観戦する人たち

オリンピック山中腹
イス持参でサッカー観戦する人たち

オリンピック山山頂から見たスタジアム

オリンピック山山頂から見たスタジアム
照明がついている

バイエルン・ミュンヘンファン

試合が終わり会場を出る
バイエルン・ミュンヘンファン

1860ミュンヘンファン

1860ミュンヘンファン
 

サッカーファンの親子

1860ミュンヘンファンの親子

 

(2000年10月29日)

 

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