やまねこの物語

日記 ドイツ入国・出国(鉄道編)
鉄道を使ってドイツへ入国するとき、またドイツから隣国へ出国するとき、一体どんなチェックがあるのだろう。僕はドイツから鉄道で出国するときそのことが大変気になっていた。どこかの駅に空港のようなチェックカウンターがあるのだろうか。それとも、電車の中に車掌のようにチェックの人がやってくるのだろうか。ドイツと隣国を結ぶ鉄道は若干例外もあるが基本的に ヨーロッパ都市間特急 EC (Euro City) オイロシティー だけである。だから都市を結ぶのであって、途中の小さな駅は停まらない。途中下車できない。

僕が鉄道を使ってドイツから出国したのはオーストリアのインスブルックへ行ったときが初めてだった。数年前のことだ。電車の窓の外には雪が残るアルプスの大きな山々の景色が広がっていた。そんなとき、車掌による切符のチェックがあった。続いてドイツ側の国境管理の人がやってきてパスポートの提示を求められた。でもそれは難なく終わった。

そのあと大きな犬をつれて数人の人がやってきた。僕は、「さすがドイツ!大きな犬をつれて旅行をしている人もいるんだなぁ」と感心していたら、その人たちが僕の所へ来て、僕にパスポートの提示を求めた。さっきも出したのに!と思いながら、パスポートを見せた。そのあと彼らは僕に対して、腕をまくれ!と言ってきた。なぜゆえに?彼らは腰の所に拳銃らしきものをぶら下げている。それからタバコを見せろ!と言う。僕はタバコを吸わないから持っていないと言うと、今度は、僕の荷物が少なすぎると言う。

僕はゲーテのあるプリーンにスーツケースなどをおいて、小さなカバンとギターだけを持って旅行していた。その上僕の格好は黒のロングコート、黒のスリムのジーンズ、黒のブーツ、おまけに長髪。どうやら僕は怪しまれているらしい。彼らの格好をよく見ると、彼らの服にはオーストリアの国旗があって、彼らはオーストリアの国境管理の人だった。彼らが連れていた犬はどうやら警察犬のようだ。僕はゲーテでドイツ語を勉強していると説明すると、彼らは納得していきなり親切な態度になってどこかへ行ってしまった。そんなこんなであっという間にオーストリアに入国していた。電車の中で国境のチェックがあるんだ!

ところでところで、後で聞いた話によると、日本人は普通、オーストリアというとウィーンやザルツブルクに行く人が多くて、インスブルックへ行く人は少ないらしい。インスブルック方面からはイタリアへも行くことが出来る。だから僕はその格好からドイツとイタリアを結ぶ麻薬の密売人と思われたのでないか、または麻薬を買うためにイタリアに向かっていると思われたのではないか、ということだった。というのは、一般的に麻薬をやっている人は腕のところにお注射の後があるらしい。それで腕をまくれ!と言われたのだろう。

オーストリアからドイツへ帰るときは、同じように電車の中で国境のチェックがあった。でも行きの教訓から帰りは、髪を束ねてイスに持たれて、おとなしくしていると、なんなく終わった。

その当時、オーストリアのザルツブルクへも行った。でもこちらでは、ザルツブルクが国境駅ということで、電車を降りたところにあるカウンターで一人ずつチェックを受けた。それでオーストリア入国が出来る。そういえばドイツ側では何もチェックがなかった。現在ではそのカウンターもなくなって自由に入国できるらしい。これは EU ヨーロッパ連合 になって国外への旅行が簡単になったからだろう。僕がザルツブルクへ行ったときはまだ EU ではなくて EC ヨーロッパ共同体 だった。

僕はオーストリア以外、チェコとスイスへ鉄道を使ってドイツから出国したことがある。チェコのプラハへは、ミュンヘンから直通の電車がある。スイスのチューリッヒへは途中オーストリア国内を通るがこれも直通がある。オーストリアを通るときはオーストリアのチェックが当然ある。これはパスポートを提示するだけで終わる。チェコ・スイスへの入国はビザが必要だと聞いていたが、どちらも電車内でパスポートチェックがあっただけで、それ以外何もない。スタンプも押してくれない。「集めているから押して欲しい」と言ったけど、「その必要はない」の一言で片づけられてしまった。ヨーロッパにおいて日本人はほとんどの国で観光ビザを取る必要がないようだ。パスポートの提示だけでいいようだ。おそらく、EU になったことで旅行者の数が増えて、国境のチェックをする方も大変になったのだろう。それで簡単に出入国できるようになったのではないだろうか。

(2000年1月上旬)
 
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