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日記 雨の日の散歩 |
| テレビでマラソンを見ていた。ちょうどその日はミュンヘンで行われていたヨーロッパ陸上競技大会の最終日で、テレビではミュンヘン市内を走る男子マラソンの模様が放送されていた。8月6日（火）から11日（日）までの6日間、ミュンヘンのオリンピック公園を中心に陸上競技大会が開かれた。その間は雨か曇りの天候が続き、男子マラソンが行われているときのミュンヘンの気温は13度となっている。セーターなどの上着がないと肌寒く感じる日が続き、8月というのに暖房の入っている場所もあった。 そのマラソンが行われた日曜日の午後、窓の外は雨が降っていたので僕は家でマラソンの中継を見ていたが、そんなとき友人から電話がかかってきた。散歩をしようと。とにかく雨の英国庭園を散歩したいとのこと。というわけで僕は友人たちと待ち合わせをして英国庭園まで雨の中歩いて行き、そこから公園（南部分）を一周した。友人たちに聞くと皆家で男子マラソンを見ていたとのこと。そのマラソンはマリエン広場やオデオン広場、英国庭園などを回ってオリンピックスタジアムに戻るもので、その日は道路もそれ用に閉鎖され、道にはマラソンのコースを示す青いラインが続いていた（英国庭園内は舗装されていないので、フェンスらしき物が設けられてあったが）。 それでマラソンが終わったあとの英国庭園に行ったのだが、人の姿はほとんどなかった。英国庭園は世界最大の人工庭園で休日だけでなく、平日もかなりの人がここを訪れる。ただ散歩している人、バレーボールやフリスビーなどで遊んでいる人、本を読む人、寝ている人、とにかく色々な人がここで各々時間を過ごしている。でもそのマラソンの日は気温も低く、また雨が降っていたので、すれ違う人もほとんどいなかった。中国の塔や湖側にビアガーデンがあるがお店は閉まっている。 非常にひっそりとしていたが、森の中に響くその雨の音は大変心地よい。公園は普段とは違った表情を見せていて、また緑も非常に優しい。公園内の道には所々大きな水たまりが出来ている。芝生（草）の部分も非常に多くの水分を含んでいて、気付けば僕の靴の中には水が入っていた。そういえば、このところニュースのトップはいつもドイツの異常気象、特に洪水に関するものが多い。ドイツだけでなくオーストリアでもひどい洪水で、ここ百年来で最大規模と言っている。他のヨーロッパでも大雨で水没している街が多く、大きな川が氾濫している模様がニュースで報道されていた。 そういえばニュースでは、今回のヨーロッパ陸上最終日にミュンヘン・オリンピック時（1972年）に起こったテロに対する追悼式典がオリンピック公園で行われたとも伝えられていた。ヘリコプターが旋回し、周りの高速道路も閉鎖され、警察の狙撃部隊なども出て厳重な警備の中、その式典が行われたらしい。今回の競技大会は当時のオリンピックと同じ施設を使い、また当時選手村として使われていた建物も、今回一時的に住民に立ち退きをさせ、オリンピック時以来初めて選手村として利用された。 今回の大会中、警察官の姿をよく目にした。またファーストフードのお店などには、各国のジャージ姿の人達や国旗を持った人達の姿があった。大会はちょうど夏休みと重なっているので、マリエン広場などは本当に人が多かった。電車に乗っているとイタリア語や英語も聞こえてきた。おそらく応援しに来ている人も多いのだろう。だが大会最終日の日曜日、英国庭園は人が少なく、非常にひっそりとしていた。車の音も聞こえないし、聞こえてくるのは雨の音や自分たちの歩く音、鳥が鳴く声だけである。晴れの日の公園もいいが、雨の日の公園も非常に雰囲気があっていい。公園は晴れの日も雨の日も憩いの場としてそこに存在している。 雨の日の公園を楽しんだあと、やはり？ビールを飲みに行こうということになった。その途中、宮廷庭園を通り抜けたが、ここも人の姿はなく、非常にひっそりとしていた。普段はベンチで休む人や芝生の上で本を読んだりゴロゴロしている人がいる。人が全くいない中、雨で濡れた花はいつも以上に色鮮やかに見えた。また雨降る中での噴水も趣があっていい。レジデンツの建物も雨に濡れてより重みのある建築に見える。友人たちともそんな話をしていると、いつしかバイエルン料理のお店に辿り着いた。中は非常に混んでいて、外とはうって代わって非常に賑やかな雰囲気だった。空席を探すのに苦労したが、ビールを飲みながら食事をしていると、偶然にも別の友人たちがお店に入ってきた。聞くと彼らは雨の中、マリエン広場でマラソンを見ていたらしい。その後ビールを飲むためにお店に入ってきたそうだ（そのお店が2軒目だったらしい。その後3軒目を目指して出ていった）。 もし天候が良ければ、ビールを飲むためにおそらくビアガーデンに行っていただろう。ビアガーデンだと同じ場所にいても人が多いので、偶然に友人と出会うということは非常に希である。そういった意味では雨ならではの偶然だったかも知れない。僕たちがお店を出たときも雨が降っていたが、たまには雨の日の散歩も悪くないと思った。 このページの写真は全て2002年8月11日（日）のものです。 |
