やまねこの物語

日記 眼鏡

パンフレット先日、友人と一緒にミュンヘン市内にあるヒポ文化財団の美術館に行った。僕たちが訪れたときは『Madame de Pompadour - L'Art et l'Amour』という催しをやっていた。これはヴェルサイユ宮殿、ヒポ文化財団、ロンドン・ナショナル・ギャラリーの共同企画として行われているもので、ヴェルサイユ宮殿では2002年2月13日から5月19日まで、ヒポ文化財団では同年6月14日から9月15日まで、ロンドンでは同年10月16日から2003年1月12日までの期間、展示が行われる。

その日、コインロッカーに荷物などを預け、美術館入り口でチケットを切ってもらおうとしたところ、僕は眼鏡を忘れたことに気が付いた。といっても僕自身は日々眼鏡をかけているわけでも、またコンタクトレンズも使用していない。日本にいたときも眼鏡は持っていたが、ほとんど使用したことがない。運転免許証を申請した時くらいだろうか。

ドイツに来てからも、眼鏡のない生活にそれほど困っていたわけではないが、大学での授業やオペラの字幕、映画・美術館を観るときなどにはあった方が便利だと思い、眼鏡を作ることにした。そのことをある友人に話すと「眼鏡はパリで買うのがいい。ドイツの眼鏡はジャガイモの形をしている」というようなことを言われた。それだけお洒落ではないのだろう。

僕は眼鏡屋でフレームを幾つか選んだが、お店の人から僕の視力ではそれらは使用できないと言われた。視力検査はお店でしてもらったのだが、日本と表示方法が違うらしく、僕の視力はマイナス4となっている。それがどれくらいのものなのか、僕には分からないが良くはないようだ。というのは視力検査をしてくれた人が「あなたの視力で眼鏡などを使わないのは信じられない!前回、眼科に行ったのはいつ?」と聞かれるほどに悪い(もちろん、眼科には行っていません)。そういえば友人に聞いたところではコンタクトレンズは一般的にドイツの方が割高らしい。

というわけで僕は眼鏡を作ったのだが、それで街を見ると今まで知らない世界がそこには拡がっていた。例えば教会天井のフレスコ画もはっきり見えるし、レンガ造りの建物も、積み重ねられたレンガを見て非常に重みのあるものに感じられた。僕が普段見ている世界は、他の人に言わせれば印象派の世界なのだろう。でも眼鏡は作ったものの、結局最初に書いた目的以外には、ほとんど使用することはない。

ところで話は大きく変わるが、先日ニュースでロンドンのディケンズ博物館から白昼堂々と小説家チャールズ・ディケンズ(1812-1870)の『クリスマス・キャロル』の初版本が盗まれたと聞いた。博物館内には複数の入場者がいたらしいが、犯人の手がかりは見つかっていないそうだ。僕たちがヒポ文化財団の美術館にいたときも、そういえば防犯ベルのようなものが幾度となく聞こえてきていた。その回数は1度や2度どころではない。友人とも「この美術館には絵画泥棒が多い」というようなことを話しながら絵画などを見て回っていた。すると警備の人が僕の所にやってきて、僕はいきなり注意を受けてしまった。というのは絵画の横にある説明書き(誰が、いつ、何を描いたかなどが記載されてある)を読む際、僕は視力が悪いので、身を乗り出すようにして自分の顔を絵画に近づけていたので、センサーが反応したと言うことだった。「絵画泥棒」の犯人は自分だった。
 

上の画像はヒポ文化財団・美術館での「Madame de Pompadour」のパンフレット

 

(2002年08月29日)

 

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