今回の旅の目的はオペラ、ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」、リヒャルト・シュトラウス「アラベラ」を観るためだったが、「ルチア」の方は数日前には売り切れということだった。しかしどうしても観たかったので、その日ザールブリュッケンに行くことにした。もしかすると当日、チケットを予約したにもかかわらず取りに来ない人のチケットや立ち見のチケットが出る可能性がある。チケットが発売される開演1時間前にチケット売り場に向かうと、そこには同じように「ルチア」を諦められない数人の人がいた。そして運良くキャンセルのチケットが回ってきた。場所は最上階である2階席のかなり端の席だったが、とにかく劇場内には入れるので安心した。
満員の中、19時30分に始まったドニゼッティのオペラ「ランメルモールのルチア」は、モダンな演出だったが、舞台に集中することが出来た。一般的にモダンな演出の場合は、オペラのストーリーの時代背景を完全に無視したものや抽象的に作られているものがあって、舞台に意識を集中させるのが難しい場合が多い。しかしここでの演出は観やすく楽しむことが出来た。また演奏に関しては所々気になる箇所があったが、全体的には非常に緊張感があって観客の反応も非常に良く、「ルチア」の世界を楽しむことが出来た。
翌日はリヒャルト・シュトラウスの「アラベラ」を観た。こちらは劇場で歌っている友人に予めチケットを取ってもらっていた(どうもありがとうございます)ので、開演時間ギリギリになって劇場内に入った。その友人の「(一般の人にとって)リヒャルト・シュトラウスは難しいイメージがある」という言葉の通り、前日の「ルチア」に比べると客の入りは若干少なかった。しかしオペラの方は、個人的には前日よりもかなりの好印象を受けた。
僕はザールランド州立歌劇場以外でも、このオペラを何度か観たが、今回観たものが最も良かった。歌を含めた演奏だけでなく演出も非常に綺麗に作り上げられ、リヒャルト・シュトラウスの「アラベラ」がここまで美しい作品だったとは!と思わずにはいられなかった。改めて演出の重要さを感じさせられた。また字幕があったのも良かったのかも知れない。バイエルン州立歌劇場でドイツ語以外の作品が上演される際は字幕が付くが、ドイツ語の場合は字幕がない。しかしザールランド州立歌劇場では前日の「ルチア」のような外国語(ドイツ語以外)のオペラだけでなく、「アラベラ」のようなドイツ語の作品にも字幕が付く。これは理解を深めるのに非常に役立つと思われる。
今回観た二つのオペラは内容的に非常に満足出来るもので、もう一度観てみたいと思わせるものであった。また「オペラを観る」ということも楽しむことが出来た。
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