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| 日記 ビール | 
| ドイツのことわざに次のようなものがある。『ビール1本と塩づけキャベツは医者から金貨を奪いとる』というものであるが、これはビールの炭酸が胃壁を刺激することによって胃液の分泌を促し、胃の働きを活性化させることによるらしい。またホップは食欲促進の効果があるとのこと。ビールは紀元前から存在した飲み物であるが、昔は上等なお酒とは考えられず、どちらかと言えば品位の下がるお酒と考えられていたらしい。それが中世になりヨーロッパの修道院で造られ、現在のようなビールが出来るきっかけとなった。(余談だがミュンヘン近郊フライジングには世界最古のビール醸造所が残り、大学にはビールの醸造を専門的に研究する学科もある。) 当時の知識人であった修道士や僧侶は醸造知識を持ち、ビールを栄養補給や医療のために製造したとのこと。現在、シュタルクビアツァイト(「強いビールの時期」の意)と呼ばれる時期があるが、これは修道士などが断食のため、満足な栄養分を摂取出来ず、それを強いビールで補ったと言うものである。その後ビール醸造は修道院から市民の手に移ったが、質の悪いビールが造られることもあり、1516年バイエルン大公ヴィルヘルム4世は、原材料を定めたビール純粋法(日記「ビール記念日」別ウィンドウで開きます)を公布した。そのビール純粋法は現在のドイツでも守られている。ちなみにビールの語源はゲルマン語の穀物を意味する「ベオレ」から来たらしい。 現在、ミュンヘンにはその製造法の違いなどから幾つかの種類のビールがある。一般的なヘレス、黒ビールであるデュンケルス、白ビール(ヴァイスビアー)にも酵母入りで濁ったヘーフェヴァイツェン、逆に澄んだクリスタルヴァイツェン、またそれぞれに淡色と黒ビールがある。その他、3月のシュタルクビアツァイトに飲むことが出来るメルツェン、ホップの味が強いボック(5月に飲むことが出来るマイボックがある)、それを倍にしたドッペルボック、夏に飲むことが出来るオクトーバーフェストビール、日本のビールに比較的似ているピルスなどがある。さらにヘレスをレモネードで割ったラードラー、ヴァイスビアーをレモネードで割ったルッセン、またお店によってはヴァイスビアーをコーラで割ったコーラ・ミックス(お店によって呼び名は違うらしい)がある。その他アルコールフライ・ビアーもある。アルコール度数も様々でラードラーなどは割っている分、2.5パーセントほどで逆にボックの中には14パーセントというワイン並みのものもある。またアルコールフライ・ビアーは名前はノンアルコールのビールであるが、実際は0.5パーセント未満のアルコールが入っているらしい。ちなみにミュンヘンのビアガーデンなどでビールを飲む時、マスジョッキで飲むことが多いが、1リットル用のマスジョッキは1.069リットルと定められている。 ところで日記「ビアガーデン」(別ウィンドウで開きます)でも書いているが、ミュンヘンは世界最大のビール祭り、オクトーバーフェストが開催されるなど街とビールとの繋がりは大きいが、それ以外に昔、州立劇場(当時王立)が火災で焼け落ちたときに再建費用を捻出するために国はビールに特別税をかけたという話がある。ミュンヘン市民はオペラ劇場を再建するために以前にもましてビール飲用に励んだ。結果、消失して2年後には完全に復元されたということだ。 ミュンヘン人はビールを非常に好んでいて、『ザルヴァトアーの前に座ったら、あらゆる心配事は消え失せる(ザルヴァトアーとは強いビールの意)』という言葉もある。またドイツには次のような格言・ことわざがある。『ビールが造られるのは人々が飲まねばならないからだ』『朝、昼、晩、夜。汝はビールをのむべし。然らずんば軽蔑されん』『アモールの矢が当たったらビールでその傷を洗うがよいと僕は君に忠告する』といったビールを飲むのを正当化するような名言がある。その他次のような一口話もある。 医者「私はあなたがビールを一杯飲むごとに、必ずリンゴ1個を食べるようお勧めします。」 ドイツの哲学者カント(1724-1804)も『ビールを飲むことは良い食事をするようなものだ』と言っているが、これらのことからビールがどれほど好まれているか分かると同時に、純粋法まで定めてその品質を守ろうとするビールに対するこだわりをも感じることが出来る。ドイツは伝統を大切にする国と言われるが、そういったビールに対する意識からもそれが感じられる。 | 
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| (2004年04月25日) | 
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