その日、友人達と和菓子を作った(それに関する日記はこちら。別ウィンドウで開きます)。そして和菓子を楽しんだあと、フリューリングフェスト(春フェスト、春祭り)へと向かった。これは毎年秋にオクトーバーフェストが開催されるテレージエンヴィーゼで行われているイヴェントで、この春で40年目のお祭りである。「オクトーバーフェストの規模を小さくしたフェスト」ということは何度も耳にしていたが、僕はまだ訪れたことがなかったので何度か訪れたことのある友人の案内のもと、会場に足を運んだ。
会場に着くとオクトーバーフェストのような幾つかの遊戯施設や大きな観覧車が目に付く。遊戯施設の中には、今年初めて採り入れられた絶叫マシンがあったり、また移動式のものとしてはヨーロッパ最大の滑り台、同じく移動式のものとしてはヨーロッパ最長のゴーカート(コース)などがあるとのこと。しかし遊戯施設に関して個人的に特に印象に残ったのは、ダーツや射撃によって、またはボールなどを投げて商品を得る、機械的でない古典的なお店の多さだ。こういったものが本来のフェストにおける、遊び場であったのかも知れない。また今年は40周年記念と言うことで、オクトーバーフェストの際に設置されたオリジナルの観覧車(高さ50メートル)が会場に置かれたとのこと。
2004年のフリューリングフェストは4月16日(金)から5月2日(日)まで行われている。プログラムを見てみると、もっと早くにこのイヴェントに来るべきであった!と思わせるような催し物が幾つもあり、その中でも特に、40周年と言うことで「40」に関するイヴェントが面白そうであった。ある日の40分間だけ、遊戯施設だけでなく食べ物の料金が40セント(約50円)というものである。もちろんその時間はビール(1リットルのジョッキ)もその金額で提供される。その他のイヴェントとしては、花火やフローマルクト、クラシックカーの展示、また会場へ向けての自転車ツアー(総延長20km以上)など毎日色々なものがなされており、ある時は現在流通していないドイツマルクでの支払いが可能な日もあった。また家族デー、女性の日の他にミュンヘンで1965年4月(フリューリングフェストが始まった年)に生まれた人をお祝いする「ミュンヘン最大の誕生日パーティー」と題されたイヴェントもあった。
ところで、このフリューリングフェストは規模的に見ると、確かにオクトーバーフェストの縮小版といった感じがある。一周してもあっという間に元の場所に戻ってくることが出来る。見方を変えればオクトーバーフェストがいかに大きな催しであるかが分かった。オクトーバーフェストは世界最大のビール祭りといわれるだけあって、16日間で600万人以上が訪れる。その数字だけ見ても非常に大きなお祭りであるのが分かる。しかしフリューリングフェストは、世界中の人々に対してというより、地元の人(ミュンヘン市民)に対して色々なイヴェントが用意されており、単に規模を小さくしたと言うよりは、(主に)地元の人が参加する、地元の人のためのお祭りといった印象を受けた。
そんなわけで僕たちは簡単に会場内を一周したあと、ビールを飲むためビアテントに向かった。このフリューリングフェストには大きなビアテントが二つあり、それぞれミュンヘンを代表する大きなビール会社のビールが出されている。ところで会場で提供されるビールといえばオクトーバーフェストは1984年以降、金属コンテナからビールが提供されるようになったが、これはそれだけ多くの人が訪れているからだろう。しかしこのフリューリングフェストでは伝統的に木樽から直接注がれたものだけが提供されている。
二つあるテントのうち、どちらに入ろうかと友人達と両者とも訪れたが、地元での人気をそのまま表しているのか、一方のテントは午後7時過ぎ、すごい熱気で空席を見つけるのが難しかったが、もう一方は逆に空席が幾つもあり、両テントともバンドによる生演奏がなされているにもかかわらず、後者は少し寂しい感じがした。結局僕たちは魚料理のある前者のテントに行き、テント内だが脇にあるボックス席に空席を見つけることが出来、そこでビールや料理を注文した。
ビアテント内の雰囲気はオクトーバーフェストの時とほとんど変わりがないように感じられるほど、みな生バンドの演奏に合わせて歌い、踊っている。ただ違う点を挙げれば、オクトーバーフェストの時よりも歌っている人の数が多く感じられると言うことだ。オクトーバーフェストの時もテント内の人は歌っているが、ドイツに住んでいない人にとっては馴染みのない曲もあり、ただその雰囲気を楽しんでいるという人も多い。しかし、フリューリングフェストでは地元の人が多いためか、時折バイエルン語が聞かれ、友人の言葉を借りるなら、ビアテント内には飲む人(歌う人)の「一体感」があった。これはオクトーバーフェストのビアテントでは感じられなかったことだ。
ところで僕たちは魚と2分の一の豚肉料理、サラダ等を注文した。ここへ来る前に和菓子を食べていたせいか少し塩気のあるものを口にしたかった。魚や豚肉などはビールと非常に合う。またバンドの生演奏も音が大きく、それ故、話す時は大きな声を出さなければならず、それによって喉が渇き、ビールを口にする。そういった感じで僕たちはそれぞれのマス(1リットルのビールジョッキ)を空にした。結局午後11時過ぎまでテント内にいたが、言い換えればそれだけ楽しい時間であった。
この日は和菓子に始まってビアテント内での料理と相当な量の食事をした。それにもかかわらず、その後のカフェで僕はメランジェとザッハートルテを注文した。友人達の、「まだ食べるのか!」という目が印象的だった。
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