2004年10月3日の日曜日に9月18日(土)から16日間続いたオクトーバーフェスト
Wiesn 2004 が閉幕した。数字的にみると、今年は気温が低く天候が良くなかった日が多かったせいか来場者は590万人と昨年の630万人を下回った。ビールの消費量も昨年の62.294ヘクトリットルから55.000ヘクトリットルと、こちらも昨年を下回った(1ヘクトリットル=100リットル)。また今年はテレージエンヴィーゼでオクトーバーフェストだけでなく、第123回バイエルン中央農業祭が行われていたので、オクトーバーフェストが行われた面積も昨年より狭くなった。逆に増えたのは寒かったせいかグリューヴァイン(香料入りのホットワイン)で3.700リットル飲まれたとのこと(前年の数字は分かりません)。またビールの値段も上がった。ビールはマスジョッキ(1リットルのジョッキ)でしか販売されていないが、一杯の値段が6,65-7,10オイロとなった(昨年は6,30-6,80オイロ)。
今年のオクトーバーフェストに僕は友人と一緒に、期間中12回訪れることが出来た。目的は様々である。そのうち何度かはビールを飲みに行った。オクトーバーフェスト初日のパレードが終わった後もそうだった。パレードが終わった後の12時過ぎ、友人達と合流してビアテントの方へと向かったが、どのテントも既に人で一杯で、ビアガーデンの方にも空席を見つけることが出来ず、結局このときは1時間ほど席が空くのを待ったにもかかわらず、その時はビールを飲むことが出来なかった(テントによっては午後1時に入場を制限していた)。
また後日、訪れた際もテントが入場制限されていてビールを飲めない時があった。ビールを飲むなら午前10時の開場と同時に来るのが良いと何度も耳にしたので、最終日である日曜日に友人と午前10時までに会場に行くことにした。さすがに入場制限はされていなかったものの、週末は午前9時開場とあって、幾つかのテントでは既に空席を見つけるのが難しい状態となっていた。幸運にもその時は空席を見つけることが出来たが、僕自身、こんなに朝早くからビールを飲んだのはおそらく生まれて初めてのことである。
ところで各ビール会社のビアテントやテントと併設してあるビアガーデンによっては案内の人がいることがある。これはビールを飲み終わって席を立つ人を見つけて、その空いた場所に人を案内するものであるが、オクトーバーフェストの初日は、その人でも席を見つけるのが難しいほどテント内、ビアガーデンはビールを飲む人で溢れ、また外にはテント内、ビアガーデンへの入場を待っている人で混雑していた。僕たちも初日にお世話になったが、その案内の女性は、おそらく学生でまだ慣れていないように感じられた(上でも触れたがその時は空席を見つけられなかった)。しかし逆に非常に強引なお店の人(女性)もいた。
ビアテント内で僕と友人が座っていた長テーブル(一般的に8-10人座れる)には僕たち二人以外にポーランド人5人組、ベルリンから来たドイツ人男性グループ7人と合計14人が相席になってビールを楽しんでいた。これだけでも既に一杯であるのに、お店の女性は「つめなさい!」とそこに更に4人を入れようとした。この時はさすがに新たに座る4人組が諦めて別の場所へと行ったが、暫くすると、またそのお店の人が来て「このテーブルはイタリア人(7人組)のための予約席よ!どきなさい!!」と本来では予約席でないテーブルだったにもかかわらず、強引に僕たちを立たせようとした。
真っ先に席を立たされたのはベルリンから来たグループの中で、一足先にビールを飲み終えた人であった。彼は「みんなが飲むのを待っている」とその女性に抗議したが、ほとんど強制的に腕をつかんでどかせようとする、その女性のパワーに圧倒されたのか、立ち上がってしまった。結局その人が立ちあがったので、まだビールを飲んでいる同グループの人も、ビールジョッキ片手に席を立ち、彼らは立ったまま通路で飲むこととなってしまった。
そのお店の女性に対して強かったのは、ポーランド人5人組の一人の女性で、新たに席に着いたイタリア人にも抗議?をして、最終的にベルリンから来た7人組がイタリア人7人組に入れ替わっただけで、僕たちもそのテーブルでビールを楽しむことが出来た。ビアテント内やビアガーデンでは相席になることが多いが、それもこのフェストの一つの特徴であると言うことが出来る。ところでテント内を覗いてみれば、今年演奏されている音楽はバイエルン的なものだけでなくロックなども多かった。何故か皆でアイーダを歌っているところもあった。そういえばオクトーバーフェスト期間中、買い物をしてお釣りの硬貨を見るとイタリアのものが普段より多かったが、それだけイタリア人が多かったのだろうか。
ところでオクトーバーフェストは今日、ミュンヘンのビールのフェストとなっており、そのビールは1487年11月30日に大公アルブレヒト4世によって制定されたミュンヘン・ビール純粋法に基づいている(この法律が現在のドイツで適用されている、1524年制定のバイエルン・ビール純粋法の基となった)。この法では、ビールは麦汁エキスの濃度が13.5パーセント以上でなければならないと決められており、オクトーバーフェストでは、同時にアルコール度数も強いビール(普通は5パーセント前後、オクトーバーフェストビールは6パーセント前後)が提供される。
アルコール度数が通常より強いためかどうか分からないが、会場の、特にビアテント内ではブラスバンドの演奏に合わせて皆が歌い、そして椅子の上に立って踊ることが多い。ビアテントでは午後10時半までビールが提供され、ブラスバンドの演奏も行われる(ビアテントが閉められるのは午後11時半)。僕は7時間ほどビアテント内にいた時があったが、お昼の食事時は比較的落ち着いているのが夕方以降は騒がしくなり、夜になると座って食事をするのが不可能な雰囲気になるというのを体験出来た。夜遅くになるとタバコの煙と踊る人の熱気でテント内は暑く(熱く)感じられる。自分がテント内にいるとそれは楽しい時間となるが、その光景を外から覗くと、まるで狂っているかのような騒ぎに映る。それだけビアテント内は異常な盛り上がりを見せている。
12時を回ってからビアテント、ビアガーデンを覗くと、その日のゴミが散乱しているのが見える。しかし翌日朝にはそれらが綺麗に掃除されているのが非常に驚くべきことである。ビアテント周辺だけでなく、会場内の通りも全て綺麗に掃除されている。そういえば最終日、12時を回ってからの会場は、ほとんど人がいなかった。一部のテント(ケーファーとワインテント)は午前1時まで開いており、そこだけ人が集まっていたが、会場全体としては、遊園地の電灯も消され、それまでの騒ぎが嘘のように非常にひっそりとした空間となっていた。ただレーヴェンブロイのライオンが、ほとんど人がいないにもかかわらず、しっぽを振りながら回っていた。ジョッキを片手に月を見る、そのライオンは「ようやく落ち着いてビールを飲める」と言っているかのようにも見えた。
Wiesn
2004 (2)に続く
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