やまねこの物語

おでかけ スイス・ザンクトガレン

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2006年4月上旬

 

    二つの丘陵地の間に街があるせいか教会の鐘の音が幾重にも響いていた。時を知らせる幾つもの鐘がザンクトガレンの街を包み込んでいた。

    2006年4月上旬、日本から来られたY氏の同行でスイス・ザンクトガレン St.Gallen の街を訪れた。自分の持っているバロック様式や教会の本にはザンクトガレン修道院が紹介されていたが、街そのものが自分にとってあまり馴染みがないので、ザンクトガレンという街は何処か遠くの街といった感覚を抱いていた。しかし実際には飛行機と電車を利用すると僅か数時間で現地に着き、それほど遠くへ来たといった印象を得なかった。

    ミュンヘンのフランツ・ヨーゼフ・シュトラウス空港でスイス・チューリヒ行きの飛行機に乗った。その飛行機はプロペラ機ではないが、それほど大きなものではなく、僅か一時間弱のフライトでは、この大きさで十分といった気がするものだった。席に着いた。自分の座席は片側3席あるうちの真ん中だったが、回りを見てみると日本人が多い。自分の右側、つまり通路側に座った女性から声をかけられた。「ここはもうスイスですか?」。その質問を聞いて、一瞬答えに詰まってしまった。

    聞けば、そこにいる日本人の方達はギリシャ旅行の帰りだということ。本来はアテネからイタリア・ミラノに飛び、そこから日本に帰る予定だったらしい。しかしミラノの空港でストがあって飛行機が飛んでいないので、日本に帰るために他の空港を使うことになったと言うこと。しかしツアー参加者全員が移動できるほど飛行機に空席もなく、クジでチューリヒから帰る人と現地(アテネ?)に残る人を分けたらしい。横に座っている人が言うには、ストで予定外の乗り換えなどがあって今いるところも、はっきりしないということだった。それで先のように質問したと言うこと。

    飛行機は予定の時間より少し遅れて離陸した。右側に座っている人からギリシャ旅行の話しなどを伺っていると、直ぐに着陸態勢となった。そうすると今度は左側、つまり窓側に座っている西洋人がドイツ語で声をかけてきた。「日本語にも方言がありますか?」というもので、自分が右側の人と喋っているのを聞いて、何を言っているかは分からないものの、イントネーションなどが違っていて、方言があるのか疑問に感じたと言うことだった。聞けば彼はスイス・ルツェルンに住んでいる人で、ちょうどスウェーデンからの帰りということ。ところで飛行機が上空にあったとき、機体の中は気温が低いように感じられたが、着陸すると機内は少し暑く感じられた。横のスイス人曰く、スウェーデンでは未だ雪が積もっていて少し寒かったので、このスイスの暑さはちょうど良いということ。

    そして右の人とも左の人とも旅の安全を願いながら、飛行機を降りた。スイスへの入国審査では、ほとんど何も聞かれず、簡単に通過することが出来たが、それは自分の前を歩いていたY氏の後だったからだろう。氏はスイスの何処へ行くのか、何日滞在するのか等質問されていた。自分の場合は「今の人と一緒に行動しているのか」と聞かれただけで、他は何も聞かれなかった。そして氏のスーツケースを受け取り、ザンクトガレンへ向かう電車に乗るため、スイス鉄道のチケット売り場へと向かった。

    窓口で自分は南ドイツでの挨拶、グリュース・ゴット!と声をかけたが、窓口の人はグリュッツィー(ドイツ語の方言の一つ)と挨拶をした。それを聞いて、ようやく自分が外国にいるという実感がした。飛行機で僅か数十分だと、感覚的に外国へ来たという気がしていなかった。ザンクトガレン行きの切符を買ってホームへ足を進めた。

    暫くすると二階建ての車両がホームに入ってきた。その二階に座って電車が発車するのを待った。電車の中は適度に混んでいるといった状況だ。暫くすると電車が動きだした。空港駅は地下にあるのか、最初は真っ暗だったが直ぐに明るい地上に出た。上空でも感じていたように天気が非常に良い。チューリヒ空港からザンクトガレンまでは約1時間で行くことが出来る。自分は窓の外の景色を追っていたが、それが自分のイメージするスイスなのか、そうでないのか、そんなことを考えていると1時間はあっという間に感じられた。そういえば車掌の人は行き先であるザンクトガレンをずっと「ザンクトガーラン」と発音しているように聞こえた。

    スイス・ザンクトガレンはドイツとスイスの国境にあるボーデン湖の南に位置し、人口約7万の街である(面積39,41km2)。街の名は7世紀のアイルランド人修道士ガルス(550頃-620もしくは640)に由来する。ガルスは仲間と共に伝道の旅に出ていたが、病気になり、現在ザンクトガレン修道院が建つ場所に612年、僧院を建てた。ガルスが亡くなったあと、この地には修道院が建ち、ここは巡礼地の一つとなった。聖人ガルスが眠る場所、ザンクトガレンの街はこの様にして誕生した。

    電車がザンクトガレン駅に到着した。Y氏のザンクトガレンでの目的は世界遺産に指定されているザンクトガレン修道院を見ることである。しかしその前に荷物をホテルに置きに行くことにした。まず、氏が予約を入れてくれているホテルの場所を地図で探したが、旧市街地だけが載っている自分の持つ地図では見つけることが出来なかった。もしかすると本当に小さな通りなのかも知れない。駅のインフォメーションで観光局の場所を伺うと、その日は既に閉まっているということ。しかしその駅員の方が市街地図を手渡してくれ、それを元にホテルの場所を探した。比較的広範囲な地図にもかかわらずホテルのある通りが見つからない。休みとは分かっていたが、一度観光局へ行くことにした。やはり休みであったが、その直ぐ側に大きな地図があり、そこでホテルのある通りを見つけることが出来た。しかしその見つけたホテルの場所は単純に遠かった。歩いて何分くらいで行けるか考えてみたが、それも時間の無駄のように感じられ、とにかく駅前からタクシーでホテルに行くことにした。それである程度の距離は掴めるだろう。

チューリヒ空港駅
チューリヒ空港駅

チューリヒ空港駅
チューリヒ空港駅、ザンクトガレン行きとある

電車の中
電車の中

スイス鉄道のチケット
スイス鉄道のチケット

チューリヒ空港駅からザンクトガレンへの車窓
チューリヒ空港駅からザンクトガレンへの車窓

チューリヒ空港駅からザンクトガレンへの車窓
チューリヒ空港駅からザンクトガレンへの車窓

ザンクトガレン中央駅
ザンクトガレン中央駅

ザンクトガレン中央駅
ザンクトガレン中央駅

ザンクトガレン中央駅
ザンクトガレン中央駅
1911-13年に建設された。

ザンクトガレン中央駅
ザンクトガレン中央駅

郵便局
郵便局
中央駅の向かいに立ち一体感を出している。
前に止まっているのはポストバス。

トラム
トラム
 
 

    駅前に数台のタクシーが止まっていたが、一見するとドイツの警察車両と勘違いしてしまいそうであった。ドイツの警察車両は白地に緑帯が入っており、そこにPolizei(警察)と書かれている。ザンクトガレンのタクシーはそれと全く同じようなデザインで、ドイツから来た人ならば誰しもが驚くに違いない。タクシーの運転手に目的地を伝え、どれくらい掛かるか時間を計ってみると、駅からホテルまでは10分強といった感じだった。歩いて行動するのは時間的にも非常に効率が悪い。ホテルで旧市街地への行き方を聞こうと思いながら、ホテル入り口のドアを開けようとした。

    ドアを開けようとしたがドアは鍵が掛かっていて開かなかった。扉の横をよく見てみると、そこにあるプレートには宿泊客の名前があり、その後にアルファベットが並んでいた。何かの略語かと思うが全く意味が分からない。プレートの上に電話があった。そこに何かを入力するのかと思ったが、受話器だけで入力する場所もない。手に取った受話器を元に戻そうとしたとき、通話音が聞こえるかと思い受話器を耳に当ててみた。するとそこからハロー、ハローと声がしている。一体何処にかかったのだ?不思議に思って受話器を一度置こうかと迷ったが、置かずに自分の名前を言うと、「10分後にあなたの所へ行きます」といって電話が切れた。どうやらホテルの人は、ホテルにいなくて何処か遠くにいるようだ。

    ホテルの人が来るのを待っている間、もう一度そのプレートの意味を考えようとした。そのプレートには宿泊客の名前と、幾つかのアルファベットの略がある。それについての説明が別の場所にあり、その略語は例えば予約番号といったものや郵便番号と言うことらしい。自分の名前の後には予約番号とあるので、その番号をドアの右側にある所に入力した。するとガチャンガチャンと、まるで自動販売機のように鍵が落ちてきた。それを使ってようやく中に入ることが出来た。自分にとってはこういったタイプの鍵の受け渡しは初めてだったので、とにかく驚いた。

    鍵にはそれぞれ部屋の番号が付いており、自分の部屋に入って荷物を置いていると、下から物音が聞こえてきた。どうやら先程電話に出た人らしい。朝食のことなど簡単な説明を受けた後、旧市街地への行き方を尋ねた。ホテルは坂道の途中にあるが、ここから約100メートル下って、右折して200メートル先にバス停があるということ。行き方は簡単だったが、週末のバスの本数は1時間に3本だった。しかしその時は時間を確認するよりも先に、ちょうどバスがやってきた。

    バスに乗って券売機で切符を買おうとすると、小銭しか入れるところがない。小銭はなかったので運転手から直接買おうとすると、「旧市街地に行くならこのまま乗っていって、中央駅で降りて切符を買えばいい」と言うこと。切符は一回券と一日券の2種類しかなく、旅行者は一日券を買えば便利だと言うことだった。中央駅でバスを降りたものの、目にした券売機は小銭か20スイスフラン紙幣しか使えないもので、結局ここでもチケットを買うことは出来なかった。

タクシー
タクシー

泊まったホテル
泊まったホテル

ホテル入り口
ホテル入り口、宿泊客リストと電話

ホテル入り口
ホテル入り口

ホテルの部屋
ホテルの部屋

ホテルの部屋からの眺め
ホテルの部屋からの眺め

バス停
バス停

バス停前の街並み
バス停前の街並み
 

バスの中
バスの中
小さなつり革が上の方に付いている。

ポスト
ポスト

 

 

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