日本からドイツ旅行に来られた、YさんとHさんの同行という形でヴェルテンブルクを訪れた。お二人の今回のドイツ旅行の目的の一つにヴェルテンブルクとレーゲンスブルクを訪れるというのがあった。その二つの街はドナウ川沿いに存在し、それほど距離が離れているわけでもないのだが、ローカル線や船を乗り継いで行かねばならず、そういったことに不安があるということで、今回の同行ということになった。といっても僕もヴェルテンブルクを訪れたことはない。修道院があるこの場所を訪れてみたいと僕自身も以前から思っていたが、交通の便が悪いと聞いていたのでなかなか腰を上げることが出来なかった。
今回のヴェルテンブルクとレーゲンスブルクの旅において、自分としては二つの場所を訪れるのは問題ないと思われるが、乗り換えなども含めて如何に時間を有効に使うか、それが一番の課題のように思えた。お二人から予め伺っていたのは、まずミュンヘンからレーゲンスブルクに行き、少し街並みを散策して、そこからヴェルテンブルクに向かう。帰りの時間は特に決めていないということだった。僕も最初はこのルートで考えていた。そこで以前ヴェルテンブルクを訪れたことのある友人にアドヴァイスを求めると、返ってきた答えは、非常に不便な場所で乗り継ぎなどが良くないから、最初にヴェルテンブルクに行って、後でレーゲンスブルクに行けば良いということだった。確かに6月は陽も長いので、レーゲンスブルクは夕方頃に到着してもゆっくり回れるだろう。ヴェルテンブルクは本数が少ないローカル線を使うので、先に訪れた方が良いかも知れない。
ミュンヘンを出るのは朝8時半頃と予め決めていたので、そこからヴェルテンブルクを先に訪れることにして予定を考えた。ヴェルテンブルクに向かうにはまずザール
Saal という街に行かなければならない。そしてその隣町のケルハイム
Kelheim から船に乗ってヴェルテンブルクに向かう。そこでまずザールに行く方法を調べてみた。レーゲンスブルクから行く方法以外にインゴルシュタットからも行けることが分かった。しかもそちらの方がレーゲンスブルク経由より30分以上も早く着く。迷わずこのルートに決めた。
当日午前8時半にミュンヘン中央駅でお二人に会い、ルートの説明をしてからインゴルシュタットに向かう電車に乗り込んだ。ところでバイエルンでは午前9時以降、バイエルンチケットという割引チケットが使える。これは特急などには乗れないが、ローカル線などを一日乗り放題で最大5人まで使うことが出来る。だから午前9時以降になると電車は少し混むことがあるが、今回僕達はそれ以前に出発したので電車の中は随分と空席が目立っていた。インゴルシュタットへは約1時間ほどで到着出来る。そこからザール行きの電車に乗り換える。インゴルシュタットとレーゲンスブルクの間にザールがあり、どちらからでも行くことが出来る。ただインゴルシュタットからだと待ち時間も15分ほどで、それほど長い時間ではない。また万が一電車が少し遅れたとしても、乗り換えには十分間に合う。しかしレーゲンスブルク経由だと、ザールまでの距離は近いが、待ち時間が長かった。電車に乗っている時間は短かったとしても、待ち時間が長いと何か時間を無駄に使っているようにも感じられるので、インゴルシュタット経由は良い選択だったといえる。
電車は遅れることなくインゴルシュタットに到着し、そこでレーゲンスブルク行きの電車に乗り換えた。電車は山間の長閑なところを進んでいった。電車の中もそれほど人が多くなく、それがより田舎を走っているという感じにさせた。また車両も古いタイプのもので乗り降りする時にドアノブを回すタイプのものだった。最近のものはボタン一つで開くが、このドアノブを回すタイプのものはドアノブが重かったりして上手く開かないことがある。下車する人を見ていると苦労している人が多い。中には寸での差で降りることが出来た人もいた。田舎の駅なので乗降客も少なく停車時間も短い上に、停車駅に関する案内も当然、電光表示ではなく、車内アナウンスのみである。そのドアノブと聞き取り難い車内アナウンスがローカル線の旅ならではのものかも知れない。
電車の中には路線図もないので、次の停車駅が分からず旅行者にとっては非常に不便に感じられたが、予めザールの到着時間を調べていたので、その時間を頼りにアナウンスを聞き、無事下車することが出来た。ドアノブはそれまで他の乗客が苦労していたように、少し重く回しにくかったが、外からも開ける人がいて、そちらの人の手によって開いたといった感じだった。
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