おでかけ ドイツ・バイロイト |
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街中にある階段を登ったところにはヴィルヘルミーネ像が立っていた。この像は辺境伯歌劇場を背中にして立ち、そしてその見つめる方向にはシュロッス教会(宮殿教会)が建っている。宮殿(ここではアルテス・シュロッス、旧宮殿)の付属の教会である。この教会は1753年の火災の後、辺境伯フリードリヒの命により、1754-56年、ジョセフ・サン=ピエールによって再建された。 教会の中は、午後6時を回っていたにもかかわらず非常に明るく感じられる。そして礼拝堂の後方にはバイロイトが最も華やかだったときの辺境伯フリードリヒと妃ヴィルヘルミーネ、そして娘の公女フリーデリケのお墓があった。その中でもヴィルヘルミーネの墓は黒大理石で、他の二つのお墓よりも一段高いところに設置されてある。ここを墓所にするのはヴィルヘルミーネの希望だったと言うことだが、その非常にどっしりとした威厳のあるお墓を見るだけでも、彼女の影響力、存在感を窺い知ることが出来る。 ところでこの教会は元々はプロテスタントの教会であったが、1813年カトリックの教会となった。これは1810年にバイロイトはバイエルン王国の一部になるが、その首都ミュンヘンはカトリックの街なので、バイロイトのシンボル的存在であるヴィルヘルミーネが眠るこの教会を、あえてカトリック教会にして、バイエルン下のバイロイトを市民に意識させようとしたのかも知れない。 そしてこの教会で1886年8月4日、フランツ・リスト(1811-1886)の葬儀が行われた。その際、アントン・ブルックナー(1824-1896)がオルガニストを務めた。教会入り口にはそのことに関する碑がある。因みにブルックナーは1873年に始めてバイロイトを訪れている。そしてその後はバイロイト音楽祭のゲストとして何度かこの街を訪れている。ブルックナーは大のビール好きとして知られているが、もしかするとヴァーグナーと一緒に飲んでいたかも知れない。そんなことを考えながら、教会裏手に回り、アルテス・シュロッス(旧宮殿)に向かった。
アルテス・シュロッス(旧宮殿)は17世紀の終わり、辺境伯クリスティアン・エルンストがそれまであった二つの建物と、新しく建てた2つの建物を一つにまとめさせ出来たものである。そしてマクシミリアン通り側は外観が統一された。 このアルテス・シュロッスの内部拝観が出来るか、インフォメーションなどを探したが見あたらなかった。そして通りに面している入り口全てを見てみたが、この建物は財務局であったり、銀行が使っているようだった。翌日、現地の人に伺うと、アルテス・シュロッスは財務局で中は特に見られないと言う答えが返ってきた。 ところでこの宮殿の前にはバイエルン王マクシミリアン2世(1811-1864)の銅像が建っている。宮殿の前にわざわざ建てられていることから、バイロイトに置ける王国の首都ミュンヘンからの影響力を意識したとも考えられる。この銅像の前はマクシミリアン通りで、その他に例えばルートヴィヒ通り、ルイトポルト通り、ヴィッテルスバッハリングなど、ヴィッテルスバッハ家の名前が付いている通りなどがある。これまでバイロイトはプロイセンのホーエンツォレルン家よりだったので、「ここはバイエルン」という意識を市民に植えつける目的があったのかも知れない。
その後、塔が印象的な三位一体教会へと向かった。ここはシュタットキルヒェ(市立教会)と一般的には呼ばれている教会で、オーバーフランケン地方に置けるプロテスタントの中心地である。元々は1194年、聖マリア・マグダレーナ教会として建てられた。1430年にはフス派によって、1605年には大火で崩壊した。そして1611-14年、ミヒャエル・メバルトによってゴシック様式に建て替えられた。また1528年より教会はプロテスタントの教会になった。 ところでこの教会で、1872年10月31日、コジマが堅信礼を受けている。そして1930年にはヴァーグナーの息子、ジークフリート・ヴァーグナー(1869-1930)の葬儀が執り行われた。 小雨が降る中、この三位一体教会を訪れた。既に午後7時前ということもあって、礼拝堂の中は暗く、そして他に誰もいなかったので、そこはひっそりとした冷たい空間だった。教会を出てそのままホテルに帰ることにした。雨と風が強くなってきたのと、気温が低く手が悴んできて、そのまま外にいるのも辛かった。4月の中旬にもかかわらず、とにかく冷たい。この旅の直前に髪を切ったので尚更寒く感じられた。ホテルのレストランはテーブルの数も少なく、また場所的にも宿泊客以外利用しないような感じだった。そこでビールとビーフシチューを注文し、食後はS氏の部屋に行って、コーヒーを頂いた。 自分の部屋に戻るとき、階段の窓からライトアップされた祝祭劇場が見えた。明日の目的地である。明日の天気は少し良くなるらしいので、良い天気を期待しながらベッドに潜った。
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