やまねこの物語

おでかけ ドイツ・ヴィース教会

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2006年5月上旬

 

    色々な本で紹介されているので、ヴィース教会の中の姿は既に知っていたが、実際に目にしてみると想像していたよりも礼拝堂の長さは短かく、逆に礼拝堂の高さは想像したよりも高かった。暫く説明を聞いていた。その中で印象的だったのは礼拝堂の天井は平面で、そこにフレスコ画が描かれていると言うこと。天井に描かれた大きなフレスコ画(ドミニクスの兄、ヨハン・バプティスト・ツィンマーマン(1680-1758)によるもの)は緩やかなドーム状に描かれているように見える。その技巧の素晴らしさには驚くばかりだ。その絵はまるで天まで続いているように感じられる。しかし柱と天井を結ぶ箇所にある装飾などをよく見てみると、この天井は真っ平らではなく、スープ皿を裏返したような造りになっていると感じられる。ミュンヘンに帰った後、図書館で調べてみるとそこにはヴィース教会の断面図があり、やはり天井は思ったような曲線を描いていた。それでもそれは天井の端の箇所だけで、天井の中央部分は平面だった。当時の建築技術の高さを改めて思い知った気がした。

    ヴィース教会はシュタインガーデンの大修道院長ヒアツィント・ガッスナーの依頼によって、当時最も有名だった建築家ドミニクス・ツィンマーマン(1685-1766)によって1746-1754年に建てられた。既に1743年に教会建設の話しはあったが、オーストリア継承戦争(1740-1748)の影響で直ぐには工事を始められなかった。そして1746年定礎式を行い建設工事が始められた。まず最初に内陣が完成し、1749年聖別式が執り行われた。そして8月31日、鞭打たれるキリスト像がヴィース礼拝堂から内陣へと移された。その際、それに参加した人の数は12.000人から15.000人が参加したとされる。それを示す絵画がヴィース教会内に、そしてヴィース礼拝堂に中に飾られている。ヴィース礼拝堂ではその絵画を飾るために、ドミニクス・ツィンマーマンによってスタッコ装飾がなされた。その後、内陣が完成した翌年1750年から礼拝堂の建設が始められ、1754年に落成式を向かえ、内部の装飾は1765年頃に完成した。

ドミニクス・ツィンマーマンによる奉納画
ドミニクス・ツィンマーマンによる奉納画
落成への感謝の気持ちを描いている。
D.Z.(ドミニクス・ツィンマーマン)、1757年とある。
右下に描かれている男女は、最初にキリスト像の涙を
目撃した人達だろうか。

鞭打たれるキリスト像の移設の絵
鞭打たれるキリスト像の移設の絵
ヴィース礼拝堂からヴィース教会内陣まで移された。
12.000人から15.000人が参加したとされる。

 

    ガイドの人による説明は暫く続いた。それが終わってようやく礼拝堂の中をゆっくりと回ることが出来たが、それぞれの装飾などを近くで見ると、想像していた以上に大きいのが分かる。この教会を建てたドミニクス・ツィンマーマンは、教会完成後もこの教会の側を離れず、教会の直ぐ側に建てられた家で亡くなった(1766年11月16日)。それほどまでにこの建築は彼にとって重要な、そして最高傑作の一つだったのだろう。礼拝堂の中に入って、360度見回してみると、そこには何人かの芸術家によって創られた天上の世界が拡がっていた。それぞれの調和が取れているせいか、この礼拝堂は豪華さはあっても決して派手ではない。そして白と金を基調としているので非常に上品に感じられる。また礼拝堂そのものが、二つの半円から成り立っており、同時に内陣やパイプオルガンの場所も曲線を描いているなど柔らかさが感じられるだけでなく、パイプオルガンの装飾もまるでレースのようで、教会全体から女性的な優しさが感じられる。

    しかし元々はヴィース礼拝堂が手狭になったため、新たに作られたのがヴィース教会である。そして本来は鞭打たれるキリスト像を置くための礼拝堂であったのが、ここまで豪華な教会だと、そのキリスト像の存在よりも礼拝堂の方が一人歩きしているような気もする。しかしこれはドミニクス・ツィンマーマンが敬虔なカトリック教徒だったからかも知れない。如何に神に近い世界を創るか、キリスト像を祀るのに相応しい場所とはどのようなものか、作りながら彼は絶えず神を意識していたに違いない。ただ「ドミニクス・ツィンマーマンが建てた」といっても、彼一人だけで煉瓦を積んでいったのではない。そこには多くの人が携わっている。

    彼を中心とした建設に携わる人々は、この教会を建てるに当たって祈りを捧げながら作っただろう。そしてそういったそれぞれの人自身の祈りを捧げる場の完成が近づくに従って、これを早く他の人にも見せたいと思う気持ちも出てきたに違いない。建設期間が1746-1754年(礼拝堂部分は1750年以降)は長い・短いなど単純に比較など出来ないが、その時に人々が感じていた気持ちの高ぶりを意識すると、この教会から様々な目に見えない力のような何かを感じることが出来る。

    その彼らが創り上げた天上の世界は当時の最先端であると同時に最高傑作といわれる作品の一つであることは今現在、我々の時代から見ても明らかだ。もし例えば、現在の我々がキリスト像のために新たに祀る場所を作るとなれば、一体どのようなものが作れるだろうか。それを意識すると、この教会が当時だけでなく現在においても価値あることが意識され、世界文化遺産に登録されているのが再認識出来る。

    ところでこの教会で最も印象的な箇所は最初に完成した内陣かも知れない。キリストの血を表す赤色の大理石の柱、天の恵みを表す青色の柱があるが、それらは一方で祭壇の柱であり、また同時に内陣の柱をも形成しており、非常に立体的な造りになっている。それにしても非常に印象的な赤と青だ。

    この内陣は3身廊からなり、また天井も高く(15,20メートル)、礼拝堂内にあるキリスト像移設の絵からも分かるように、後期ゴシック様式のような造りになっている。ところで内陣の完成が1749年で、その際ここにキリスト像が移設された。そして教会全体の完成は1754年と言うことは、その間、一般の信者はキリスト像に祈りを捧げることが出来たのだろうか。

礼拝堂
礼拝堂
全長約45メートル。
身廊部分全長29,35m、幅24,75m、高さ20m。
内陣全長13,5m、幅18m、高さ15,20m。

礼拝堂後方
礼拝堂後方


 

曲線を描く礼拝堂
曲線を描く礼拝堂
礼拝堂の柱は2本ずつからなり、全部で8つあるが、
それは真福八端を表している。

椅子
椅子


礼拝堂
礼拝堂

ドミニクス・ツィンマーマンの名前
ドミニクス・ツィンマーマンの名前

内陣
内陣

内陣
内陣

 内陣のフレスコ画
内陣のフレスコ画
1747年、ヨハン・バプティスト・ツィンマーマン作。
 

内陣
内陣
赤色大理石の柱はキリストの血、鞭打たれるキリストの
救済的な愛情を表し、青色大理石は天の恵みを表している。

 主祭壇
主祭壇
ドミニクス・ツィンマーマンによる。

マリア像
マリア像
 

鞭打たれるキリスト像
鞭打たれるキリスト像
 

主祭壇画
主祭壇画
1753年、宮廷画家バルターザー・アウグスト・アルブレヒト作。

ペリカン像
ペリカン像
血を流し尽くしたイエスの献身を象徴している。
エサが無くなって我が子の命を救うため、自分の血を飲ませたという
話しに由来する。
左の彫像は1747/48年、エーギト・フェアヘルストによって作られた。

神の子羊
神の子羊
キリストの象徴。7つの封印の付いた書の上に乗っている。


 

 紋章
紋章
シュタインガーデン修道院の紋章。

大修道院長席
大修道院長席
ドミニクス・ツィンマーマンによる礼拝堂内装飾の
青、緑、赤色はそれぞれ信仰、希望、愛を表現している。

説教壇
説教壇
ドミニクス・ツィンマーマンの設計によるもの。

説教壇装飾
説教壇装飾

説教壇装飾
説教壇装飾

説教壇装飾
説教壇装飾

説教壇装飾
説教壇装飾

イルカに乗った少年
イルカに乗った少年
イルカはキリストを表している。

グレゴリウス1世像
グレゴリウス1世像
4つの像はアントン・シュトゥルム作。

アンブロジウス像
アンブロジウス像
 

ヒエロニムス像
ヒエロニムス像

アウグスティヌス像
アウグスティヌス像

パイプオルガン
パイプオルガン
1757年、ヨハン・ゲオルク・ヘルテリヒ作。約3000本ある。
中央上部にはペリカン像がある。

告解室
告解室 

小祭壇
小祭壇
ドミニクス・ベルクミュラー作。
祭壇画は1756年、ヨハン・ゲオルク・ベルクミュラー作。

小祭壇上部の彫像
小祭壇上部の彫像

天使像
天使像

天使像
天使像

礼拝堂天井のフレスコ画
礼拝堂天井のフレスコ画
フレスコ画の大きさは23x17m。

礼拝堂天井のフレスコ画
礼拝堂天井のフレスコ画

礼拝堂天井のフレスコ画
礼拝堂天井のフレスコ画
永久への門。

礼拝堂天井のフレスコ画
礼拝堂天井のフレスコ画
永久への門にある永久を表す蛇。

礼拝堂天井のフレスコ画
礼拝堂天井のフレスコ画
審判の玉座。

フレスコ画から出た足
フレスコ画から出た足
 

礼拝堂天井の装飾
礼拝堂天井の装飾
装飾がなされ、窓がある。

装飾
装飾

柱の上部にある真福八端のフレスコ画
柱の上部にある真福八端のフレスコ画

側廊
側廊

 側廊にあるフレスコ画
側廊にあるフレスコ画

側廊にあるフレスコ画
側廊にあるフレスコ画

側廊にあるフレスコ画
側廊にあるフレスコ画

側廊にあるフレスコ画
側廊にあるフレスコ画

側廊にあるフレスコ画
側廊にあるフレスコ画

装飾
装飾

装飾
装飾

装飾
装飾

 

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