やまねこの物語

日記 オペラフェスト2006
10)カサロヴァと「オルフェオとエウリディーチェ」

2006年7月11日(火)、バイエルン州立歌劇場でグルックのオペラ「オルフェオとエウリディーチェ」(1859年ベルリオーズ版)が上演された。休憩無しで約2時間の舞台である。

このオペラを観て再度思ったのは指揮者アイボア・ボルトンとヴェッセリーナ・カサロヴァの相性の良さである。バロックオペラを得意とするボルトンの指揮は非常にしなやかで、淡々したものになりがちなバロック音楽を非常に上手く操っている。時には波に揺られるように、時には追い立てるように、そのテンポの良さが音楽を生きたものにしている。

そしてカサロヴァである。今まで彼女が歌うのを何度か聴いたが、個人的な印象ではボルトン指揮の時が一番、のびのびと歌っているように感じられる。今日のオペラもそうだった。非常に表情豊かな彼女の歌を聴くことが出来た。舞台後の挨拶で彼女がボルトンを抱きしめるように挨拶をしていたのが非常に印象に残っている。

ところで来シーズン、バイエルン州立歌劇場総支配人、音楽総監督が変わることによって、演目なども大きく変わる。これまで多かったヘンデルなどのバロックオペラの数も減少する。それゆえバロックオペラを中心に振っていたボルトンが指揮を振る数も、来シーズンの予定表を見ると大幅に少なくなっているように感じられる(4演目のみ)。

しかしバイエルン州立歌劇場で指揮を振る数が少なくなっても何処か別の歌劇場でヘンデルを中心としたバロックオペラを振っていて欲しいと願う。そしてヘンデルのオペラの普及に務めたということで、いつかSirサーの称号を得て欲しいと自分は密かに思っている。

以前、オペラが終わった後、他の出演者にはサインを求める人達がいたが、その中でほとんど誰にも気づかれずその人混みの中を通り抜け、一人でタクシーに乗っていったボルトンの後ろ姿。その印象的な光景が今も記憶に残っている。

オペラ「オルフェオとエウリディーチェ」は午後9時頃に終わった。歌劇場の外に出るとまだ空が明るい。
風がなく蒸し暑い夜だったが、どこからか運ばれてくる菩提樹の甘い香りがそれを少し忘れさせた。



追記

家に帰ってネットのニュースを見ると、バイエルン州立歌劇場の宮廷歌手クルト・モルが引退というニュースがあった。47年間の歌手人生に終止符が打たれた、ということ。次のモーツァルト「魔笛」(ボルトン指揮)では彼がザラストロを歌う予定だっただけに、もう一度聴きたかったが、お疲れ様でした。

公演後の挨拶

公演後の挨拶

公演後の挨拶

公演後の模様
カサロヴァ(左)とボルトン(右)。

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(2006年8月6日)

 

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