やまねこの物語

日記 オペラフェスト2006
6)「モーゼとアロン」

気温が30度前後の暑い日が続いている。友人達とカフェでアイスクリームを食べていると携帯電話が鳴った。バイエルン州立歌劇場の方からで、聞けば夜に行われるシェーンベルクのオペラ「モーゼとアロン」のチケットがあるということ。

そのチケットを譲って頂き(購入した)、知り合いの大学教授に電話をして一緒に観ることにした。そして「モーゼとアロン」の開演10分程前にチケットを頂いたのだが、その座席を見て少し驚いた。パルケット最前列のほぼ中央で指揮するメータの斜め後方といった非常に良い場所であった。

オペラは19時開演だった。普通は最初のベルが鳴ってから3度目の最終ベルが鳴るまで10分近く時間があり、その後、客席のドアが全て閉められてから照明が消え、指揮者が出てくる。つまり普通はベルが鳴ってから指揮者が出てくるまでに10分から15分程の時間があるのだが、この日は、21時から始まるサッカー・ワールドカップ準決勝ドイツ対イタリアの試合を考慮したのか、(歌劇場の方に聞けば)その時間は5分早められたということ。また休憩時間も別の日の公演よりも5分短く表示されていた。

当初のオペラの終了予定時間は21時35分頃だったが、そういった配慮によって21時20分過ぎには終わった。そしてカーテンコールの時間も短かった。公演はブラヴォーが飛び交う非常に良いものだったが、思った以上、早くにカーテンコールが終わった。観客だけでなく出演者もサッカーの試合の行方が気になっているのだろう。

公演後の挨拶ところで自分は今回の「モーゼとアロン」を幸運にも3度観ることが出来た(総稽古、プレミエ公演、オペラフェスト最終公演)。聴いた(観た)場所はそれぞれ違っていたが、その時その時で色々な発見があってオペラを楽しむことが出来た。

CDで初めてこの音楽を聴いた時、このオペラに対する印象は全く良くなかった。しかし総稽古を観た時、その印象が大きく変わり、またDVDなども観ることによって最初に抱いていた「壁」が消えているのが感じられた。また2度、3度と歌劇場で聴くことによってそれまで聞こえていなかった音が聞こえて来たりしてシェーンベルクの創り出した世界が少しずつ分かってきた気がした。

特に3度目はパルケット最前列で観ることが出来、舞台に近いと言うことで、舞台が良く見えただけでなく、オーケストラの人々が指揮者と楽譜を交互に見て演奏する緊張感を感じることが出来た。その音楽が作られている瞬間を観ることが出来たのは今回の公演で(個人的に)最も良かった点である。

それにしてもこの一週間で自分が今まで抱いていたシェーンベルクに対するイメージが大きく変わった。実際にその世界に触れてみると、綺麗だと感じる所、興味深いところがあり、今回のオペラフェストでは全3公演だが、出来ることならもう一度観て(聴いて)みたいとさえ思うようになった。シェーンベルクの世界に触れ、自分の中に自分がまだ見ぬ世界があると感じられた。

上の写真は公演後の挨拶時のもの。
 

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(2006年8月6日)

 

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